今季、他クラブに期限付き移籍していた選手を特集。今回は、東京五輪世代を追いかけ続けてきた林遼平記者に、橋岡大樹選手を紹介してもらった。
写真:©STVV
浦和で生まれ、浦和で育った男は、今年の1月に欧州へと渡る決意をした。東京五輪前の難しい時期であったことは間違いない。それでも、その先にある日本代表の舞台を見据え、さらなる成長を求めてベルギーへと渡った。
「以前から自分の中で海外で挑戦してみたい気持ちが強かった。このタイミングで出られるとなったので、悩まずに『行きたい』と言いました。自分のプレーが世界で通用するかを知りたかった」
ベルギーのシント=トロイデンに移籍して以降は、加入直後こそなかなか出場機会が得られなかったがものの、シーズン終盤には右サイドバックの定位置を確保。攻撃的なプレーを繰り出し、さっそく3つのアシストを記録するなど、欧州で自分の力が通用することを証明した。
言語を含めて慣れるまでに時間がかかったのは容易に想像できる。ただ、その日々が橋岡自身を強くしたと物語っている。
「やはりプレーで見せないといけないというところで、僕自身、本当に最初からスタメンを取るためにものすごく頑張ったつもりです。シーズンの途中からということで、まず早く認められないといけないので練習からガツガツやっていました。その結果、スタメンを勝ち取ることができた。難しい環境に自分の身を置くことで、やる気が満ちあふれて、自分のメンタルが鍛えられたと思っています」
そして迎えた東京五輪は悔しさの残る大会となった。狭き門だったメンバー入りは果たしたが、酒井宏樹の牙城を破れず、先発出場は1試合のみ。ムードーメーカーの一人としてチームを盛り上げたものの、大会の結果以上に、ピッチに立つことができなかった悔しさが募った。
それでも新シーズンが始まると、再びシント=トロイデンで輝きを放つ。今季は右サイドバックだけでなく、右サイドハーフのポジションでも起用されるなど、攻撃面で存在感を発揮。クロスの質が向上し、ゴール前のチャンスクリエイトも日増しに増加している。もちろん、なかなか数字につなげることができていない(今季18試合出場1アシスト※12月29日時点)のも事実だ。いまの課題は、チームメイトとさらにコンビネーションを高め、より結果に絡める選手となること。
スタメンの座を手にした今シーズン。春まで続く1シーズンを通してどんな活躍ができるか。浦和からの期限付き移籍期間は22年6月30日までだ。再びA代表の舞台に立つために、橋岡は今、ベルギーの地でさらなる研鑽を積んでいる。
(林遼平)・・・・・・