今季、他クラブに期限付き移籍していた選手を特集。今回は、ガイナーレ鳥取の番記者を務める石倉利英記者に、大城蛍選手を紹介してもらった。
(写真:石倉利英)
「出場機会を求めてガイナーレに来たので、自分の成長にチームの成長もついてくれば、と思っています」
新型コロナウイルスの影響が、まだ日本では限定的だった2月。雪の中での練習後に話を聞くと、ユース時代も指導を受けた大槻毅監督や、土田尚史スポーツダイレクターから「『常に試合に出場し続けろ』『そうでなければ、浦和は戻ってきても出られるような環境じゃないぞ』と言われた」とハッパをかけられたと教えてくれた。
ところが6月末にJ3リーグが開幕すると出場はおろか、ベンチ入りすらできない。基本布陣が3バックの鳥取で、?木理己監督は最終ラインの選手にも、機を見て積極的に攻撃に参加することを求めていた。大城も「理己さんが攻撃的なサッカーを求めているので、もっと攻撃に参加しなければいけない」と意識はしていたものの、評価は高まらない。
シーズン終盤のJ3第22節で初めてベンチ入りすると、第23節でJリーグデビューとなる加入後初出場を果たし、第24節も出場。2試合とも1分間のプレーながら、ようやく第一歩を踏み出したかに見えた。だが、次の試合からは5試合連続ベンチ外。さすがに、もうチャンスはないだろうと思われた。
(写真:石倉利英)
ところが第30節、ついに初の先発出場。試合前日に負傷した選手が出て、チャンスがめぐってきた。SC相模原とのJ2昇格を懸けた大一番。ここで勝利に貢献できれば、翌節からのシーズン最後の4試合でも先発する可能性は十分にあっただろう。
しかし、鳥取は2-3で敗戦。自分へのパスを目の前でインターセプトされて3失点目に絡んでしまうなど、大城のパフォーマンスも芳しいものではなく、その後の4試合はすべてベンチ外に終わった。
鳥取は今季、残り2試合まで昇格の可能性を残していた。昇格争いの重圧にさらされながら試合出場を重ねていれば、貴重な経験になったはずだが、わずか3試合、85分間のプレーでは見込みが外れたと言わざるを得ない。
それでも練習では、ボールに食らいつき、声を出し、周囲を動かしながら懸命にプレーしていた。J1クラブとは大きく異なる厳しい練習環境で、チャンスをつかもうと歯を食いしばった日々が、今後のプロキャリアの糧になることを願ってやまない。
(石倉利英)
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