2021年から浦和レッズに新加入する選手を特集。第4回は、サッカー新聞エル・ゴラッソの栃木担当・鈴木康浩記者に、塩田仁史選手を紹介してもらった。
守備面のみならず、チーム作りにおける要所を
抑えながら貢献もできるベテランGK
2021年シーズンはキャリア17年目、年齢は40歳を迎える。周知のとおり経験は豊富だ。FC東京や大宮アルディージャで守護神を担ってきた。近年は控えのGKとしてGKグループを支える立場にあるが、いざ試合に出ればレギュラーGKと遜色のないプレーを見せている。大宮時代もそうだったし、今季加入した栃木でもそうだった。いつでも心身ともに準備ができているプロフェッショナルなGK、それが塩田仁史だ。
今季は栃木で12試合に出場した。正GKと期待される選手の調子が上がらないなか、シーズン序盤からゴールマウスを守った。J2第7節の町田戦で手を負傷してしまい3カ月ほどピッチを離れたが、シーズン終盤に再びピッチに戻るとブランクを感じさせないプレーでチームに貢献した。
シュートストップやクロス対応などの安定感は健在だが、秀でた特長はコーチング力だろう。塩田が栃木に招かれたのも田坂和昭監督曰く「守備をオーガナイズするため」。自分たちが攻撃しているときのリスクマネジメント、攻守の切り替えの瞬間、リスタート時など、どの試合でも最後方から塩田の絶え間ない、しかも十分過ぎる声量の声がスタジアム中に響き渡った。その声がチームメイトに安心感と適切なプレーの選択肢を与えていたのは間違いないだろう。
セカンドGKとしてベンチ入りしたときは、ピッチサイドから誰より声を張り上げて指示を出す姿もある。試合に絡めない時期でもチームにおけるベテランとして自身の振る舞い方を自覚して行動に移せる選手だ。実際、今季の栃木は当初の目標は一桁順位だったが、その中でJ2の中位から上位をうかがう位置につけていた。試合に数多く出場していた若手選手たちには現状に“いい感じ”だとやや満足する雰囲気があったようだが、塩田はそれではダメだと活を入れ続けていた。
「若い選手にはたまに伝えていました。J2の10位前後にいるのはなかなか難しい順位というか、そういうメンタリティーでは駄目だと思っているんです。常にトップ5以内に付けて、そこじゃないとダメなんだというメンタリティーでいることが大切。『例年より順位が良かったから良かったね』という感覚では来年以降は下に落ちていくしかない。もっと貪欲にやらないといけないんだよ、ということは言い続けていました」
守備面のみならず、チーム作りにおける要所を抑えながら貢献もできるベテランGKである。
(エル・ゴラッソ栃木担当 鈴木康浩)