2021年から浦和レッズに新加入する選手を特集。第2回は、サッカー新聞エル・ゴラッソの琉球担当・仲本兼進記者に、小泉佳穂選手を紹介してもらった。
飛躍のきっかけは自粛期間中のトレーニング
プレッシャーを楽しむことも彼の良さ
琉球に加入して2年目の小泉佳穂(よしお)にとっての今季は、まさしくシンデレラ・ボーイのような存在だった。
青山学院大を経てプロ入りした小泉の2019年ルーキーイヤー。出場機会は先発1試合を含む12試合で、トップ下でボールをさばき流れを変えるジョーカー役を担った。しかしチーム、そしてプロの水になじむことで精一杯だった彼は、得点に絡むような主だった活躍はできず、1アシストのみに終わった。
しかし今季、才能が開花。172cm/63kgと華奢な体型とは裏腹に、激しいチャージを受けても腰を低くし簡単にロストしないボールキープ力を見せれば、ドリブルで相手を引きつけながらスルーパスを出し決定機を作る。その上で、周りを生かしながら自分も生きる姿勢を示し、J2第37節・東京V戦で自身初となる2ゴールをマーク。フィニッシャーとしての素質も垣間見せた。本職のトップ下だけでなく、ボランチに立てばアンカーとしてビルドアップのサポート。サイドハーフでもプレーが可能で、両足から繰り出す高精度のクロスでチャンスを演出し、チームの期待に応えた。レギュラー定着した今季38試合出場、6ゴール3アシストを記録した。
彼の飛躍のきっかけとなったのが、自粛期間中にチームで行っていたWEBを介した筋力トレーニングだった。「正直筋トレは嫌いだった」と言う小泉も、ボールが蹴れない時期に念入りに鍛えたことで簡単には倒れない体を作り上げた。その作用は攻撃だけでなく、激しいプレスバックで相手からボールを奪いきり、攻守切り替えの起点となった。
小泉は中盤ならばどこでもプレー可能なマルチプレーヤーではあるが、どのポジションでも共通して意識していることはボールを受ける位置。「僕はボールに触ってリズムを出すタイプなので、いかにボールを良い位置でもらえるかということを脳の8割ぐらい使って考えています」。その理想とするプレーを実現させるために必要となるのがコミュニケーション。ここで欲しいというタイミングでボールを受けるために自分の特徴を周りに理解させたことが飛躍につながった。
FC東京の下部組織出身で、その後前橋育英高でプレー。同級生には坂元達裕(C大阪)、渡邊凌磨(山形)、鈴木徳真(徳島)、岡村大八(群馬→札幌)とそうそうたるメンバーが揃う中、小泉は技巧派MFとして存在感を示していた。特に坂元とは中学時代から切磋琢磨する仲で、坂元の代名詞であるドリブルも小泉のテクニックを真似て身につけたもの。埼スタの中央で鋭い切り返しで突破を図る小泉の姿もきっと見られることだろう。
プレッシャーを楽しむことも彼の良さであり、最近では「サポーターに元気を与えたい」という気持ちからJ2第40節・愛媛戦でバイシクルシュートも披露。ごくわずかにゴールの枠を捉えきれなかったが、スキルの高さを見せつけ観客を沸かせた。
ただ、難しい状況になればなるほどムキになる性格でもある。「チームスポーツなのでムキになりすぎてもあまり良くない」と本人は自覚するも、難しい中でやってやろうという気持ちを見せる場面も見受けられた。しかし、自分ができることを理解した上でチャレンジすることは決して悪いことではない。その経験の積み重ねが今の小泉を作り上げたと言ってもいいだろう。
今季、リカルド・ロドリゲス監督率いる徳島と2度対戦し「徳島を客観的に見ていた。シンプルにいうとパスサッカーなんですが、つなぐというよりも一人ひとりのポジショニングが細かい決まりごとがあって面白いなと思っていた」と話す小泉。彼の中ではすでにイメージは出来上がっているに違いない。
(エル・ゴラッソ琉球担当 仲本兼進)