2020年から浦和レッズに新加入する選手を特集。第2回は、青森のサッカーシーンを追いかける青森ゴールの夏目二郎記者に、武田英寿選手を紹介してもらった。
経験から学び、成長につなげてきた武田。MFながら特筆すべき得点力
青森山田中学校時代、全国中学校サッカー大会で2度の優勝を経験し高校に進学。昨季は唯一の2年生レギュラーとして高校選手権優勝に貢献。主将となった今季はトップ下を主戦場とし、高円宮杯U-18プレミアリーグファイナルで日本一に輝いた。U-18日本代表の一員としても活躍した武田英寿は、幼い頃から夢に見たプロの世界へと挑む。
ここに至るまでに彼が手にしてきた数々の栄光を見れば、順調にエリート街道をひた走ってきたかのように思える。しかし、武田と同じく2年生で7番、3年生で10番を背負い、プロ入りを果たした?橋壱晟(千葉)、郷家友太(神戸)、檀崎竜孔(札幌)といった先輩と、武田が辿ってきた道は似て非なるものだった。1年生からトップチームに名を連ね、2年生になると同時にレギュラーとして活躍の場を得ていた彼らとは違い、1年生ではセカンドチームにすらほとんど絡めていなかった武田。トップチームで先発を務めるようになったのは2年生の夏からで、これは青森山田から高卒でプロ入りした選手の中ではかなりの遅咲きと言える。
だが、トップチームで頭角を現す以前から武田の存在に熱い視線を注いでいたのが浦和だった。攻撃のセンス、視野の広さ、左足から繰り出される長短のキックの精度などを評価。2019年3月にオファーを出すと、6月には加入内定が発表された。
同校サッカー部の黒田剛監督は武田について、「春先から夏にかけては、プレー面も主将としても物足りなかったが、夏以降ぐらいから良くなり、決定的な仕事をしたり、得点を挙げたり、プレーで主将と認められるようになった。元々人に厳しく言うタイプではないが、勝つために犠牲心を持ってやってくれている。本人の努力する姿勢や、誠実さ、素直さというものが全面的に出たことによって、サッカー的にも人間的にも大きく成長した」と評価している。
プロ入りを勝ち取ったことで得た自信と、主将としてチームを束ねる中で増した責任感は、それまで持っていたスキルをさらに一段階上のレベルに引き上げた。ゴールに結びつく決定的なパスを繰り出し、さらにはドリブル突破からゴールを奪う個人技術を高め、プレミアリーグEAST2位の12得点を挙げる。この一年で強さと凄みを増した武田の活躍が、青森山田高校を3年ぶり2度目の『高校年代真の日本一』へと導いた。
加入内定会見で、「浦和レッズは選手もサポーターも日本のトップクラスのチーム。チームを勝たせられるように自分の特徴を出してプレーして、得点やアシストで結果を残していけたら」と話した武田。すべての経験から学び、自らの成長につなげてきた彼が、プロの世界でどこまで飛躍を遂げるのか、楽しみでならない。
(『青森ゴール』夏目二郎)