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REDSPRESS EYES|「横断幕問題」を別の観点から考える|レッズプレス!!

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「横断幕問題」を別の観点から考える

多角的な視点で浦和レッズに迫るコラムコーナー「REDSPRESS EYES」。今回はスポーツライター・吉崎エイジーニョ氏に「横断幕問題」を受けて、今後の応援をどうすべきかという視点で原稿を執筆していただいた。

“別の観点から考える”

一連の「横断幕問題」については、特にこの点に焦点を絞って、ことの推移を外から見続けている。

3月14日(金)、「Yahoo!個人」(※)でこの趣旨の原稿をアップした。13日(木)の「清水戦・無観客試合」の発表を受け、大手メディアがその処罰の内容ばかりを報じた。いやいや重要なのは「人種差別」の内容が何だったのか、ということでしょう。そういう観点から意見を発信した。

最初は「韓国に関すること」のようにも見えたし、そういう報道も出た。真相は違うようなのだが、この点が大きく報じられなかった。クラブ社長の説明も曖昧なものに見えた。「人種差別」が誰に向けられたものなのか。そこが明らかにならずに話が進んでいくのではないか。そういった趣旨だ。

違う観点を示していかなければ、より“被害”が広がるからだ。今回の件では、浦和レッズサポーター全体が“外野”からずいぶんと意見を言われているでしょう? もちろん悪いことは悪い。でも「別の観点=サッカー的見地」から意見を言い返さないと、より憂うべき事態になる。だから今回も大手メディアとは違う観点で考えてみたい。

前置きが長くなった。ここで示してみたい観点は、「じゃあ今回の問題の解決策は何なのか」という点だ。23日(日)の試合をきっかけに、さらに横断幕への批判が高まるだろう。そんな今だからこそ、先を見据えた観点から考えてみたい。

問題解決とは、究極的に言えば人種差別撲滅だ。これは、ここで描くにはテーマが大きすぎる。かといって「反省しています」「もう二度と起こさないようにします」「当事者を出入り禁止にしました」と言うばかりでは、発展はない。はっきり言って、現状を海外の目から見ると「謝ってばかりで意見を言わない典型的日本人の姿勢」、「そもそも“人種差別”が何を指していたかも示せない」くらいにしか見えないはずだ。

起きた出来事は許されないこと。しかし、起きた以上はJリーグと浦和レッズの将来につなげていく姿勢をはっきりと示すべきだ。問題解決のために、じゃあ何が問題になっていくかを考えてみる。逆に「最悪の事態」を想定してみるといい。

まずは、すでに起きているだろう「2次被害」が広がっていくことだ。今回の件では、実は多くの浦和レッズサポーターも「被害者」ではないか。つまりは多くが、この先も「人種差別をするサポーターの一員」として見られてしまう被害。これは本当に由々しき問題だ。

これがエスカレートしていくとどうなるか。最悪の事態を想定するなら、自制・自粛ばかりが続いていき、浦和のホームゲームが「全く過激さ・熱さの感じられない場所」になってしまうことだ。ファミリーにばかりベクトルの向いた、明るく楽しく清らかな場所。それははっきりって(自分自身が浦和サポーターではないが!)困る。

2007年の10月、AFCチャンピオンズリーグ準決勝・城南一和戦での出来事が忘れられない。PK戦の時にスタジアム中の旗がゴール裏に集まり、ソンナムのキッカーが蹴る際に視界に入るように一斉に上下に揺り動かした。結果、相手のキッカーがミスして、浦和は決勝進出を決めた。

あんな痛快な出来事はない。ホームだからあれくらいはやって当然。ルールの中で実現可能な、最高の“悪さ”だった。でも“外野”から文句を言われっぱなしの今、これをやったらどんな意見が出るだろう? やりすぎ、相手を尊重していない、邪魔をするとは何ごと? そういった意見は出かねないだろうか。

要は、今のJリーグのスタジアムには「基準」がないのだ。時に挑発的なメッセージを発する。過激に相手とぶつかる。これがあってこその非日常的空間。週末の救いなのに。

しかし、何が「YES」で何が「NO」なのかの基準がない。もちろん、今回の件ははっきりと「NO」なのだが、これをひたすら謝るだけでは、基準など100年たっても定まらない。Jリーグ側もそれを知らないし、クラブも知らないし、サポーターも知らない。「それは常識で考えればいいんでしょ?」という話になっているが、常識のラインなんて残念ながら各自でバラバラなのだ。

浦和レッズのホームゲームという空間、そこに携わる人たちが今回の件に屈しないためにも。「これはNG」と示すのはもちろん、逆のことも言える状況をつくることが、解決策になるのではないか。「これはフットボール的には“あり”なことなんですよ」。そう、はっきりと言えることだ。

“マス”、“一般層”、そういう層にばかり遠慮して、自分たちが「フットボール的」とは何たるかが示せなくなる状況がどんどん示しにくくなっている。今ここで踏みとどまらないと、どんどん流れが悪くなる。ワールドカップイヤーの今年、再び渋谷あたりで大騒ぎする若者が話題になるだろう。その前では、コアファンの意見など「少数派」で片づけられてしまう。言っては悪いが、すでにJリーグでも下部のチームの試合は、あまりにファミリー向けの雰囲気になっている。戦う雰囲気がない。サッカーのコア・ファンでもある自分は目を背けたくなることが、たびたびある。浦和がむしろ「過激さ」を守るリーダーであるべきだと思うのだ。

人種差別は絶対的な悪だ。それは、とがめられるべきもの。一方で「反省」「謝罪」ばかりでは“被害”は広がっていきかねない。23日の痛みは苦しみながらも前に進むステップとすべきではないか。浦和レッズにとっても、Jリーグ全体にとっても。
(スポーツライター・吉崎エイジーニョ)

※浦和横断幕問題 処罰内容だけが重要か?
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yoshizakieijinho/20140314-00033552/
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