INACに逆転負け。首位キープもますます混戦に
2019プレナスなでしこリーグ1部で、現在首位の浦和レッズレディースは、「体育の日」のきょう10月14日(祝・月)、第15節を迎え、3位のINAC神戸レオネッサとの一戦(13時キックオフ)に臨んだ。この試合はINACが主管クラブとなり、茨城空港と神戸空港を結ぶ航空便の増便を記念した一戦として、J1の鹿島アントラーズのホームスタジアムである茨城県立カシマサッカースタジアムで開催された。
第13節で日テレ・ベレーザとの上位対決を制するなど、勝ち星を重ね、首位に立っている浦和。当然ながら、このまま勝ち点3を重ね続ければ、頂点が見えてくる。
16分、中盤の栗島朱里から右のオープンスペースへ絶妙なパスが入ると、ボールを受けた右サイドバックの清家貴子がスピードに乗ったまま持ち運び、最後は相手との1対1も制して、センタリング。ニアサイドへ入ったクロスボールを、「得意なコース」と菅澤優衣香が頭で合わせ、ゴールネットを揺らした。練習での成果が出たゴールだったと、森栄次監督も、選手も、胸を張って答えた。その言葉を聞かずとも、ピッチから自信がみなぎる攻撃の組み立てだった。
だが24分、INACでサイドバックを務める高瀬愛実が、流れの中から中央でボールを保持し持ち運ぶと、ペナルティエリアへ入った瞬間、左足を思いきり振りぬいた。FWや2列目が本職だった高瀬らしさが光る1発にやられ、1ー1。
勝負は、後半に持ちこまれた。
森監督は、ハーフタイムに遠藤優、塩越柚歩の2人を同時に投入した。遠藤には高瀬対策を、塩越には最前線でボールをおさめるという重要な仕事を果たす菅澤の近くでプレーすることを求めたが、森監督は「もう少し、人数と絡みが出れば良かったが、絡む角度などがうまくいかなかった」と語った。この2人だけではなく、あらゆる場面で点と点が線にならず、二手、三手と浦和の攻撃は続かなかった。
浦和には、後半の残り45分間で「負けてはいけない」「勝たなければいけない」という首位に立つチームのプレッシャーがのしかかったのかもしれない。試合全体を見れば、前半の1失点はアクシデントと言って割りきっても良かった。「シュートを打ってくるかもしれない」という予測は必要だが、迫力あるシュートを放った高瀬を褒めた方が良い。また、INAC相手に、1ー1で後半を迎えること自体、そう悪い展開ではなかったはずだ。
だが、今回は焦りを生み、その焦りが選手間のズレを生んだ。後半は、攻撃もプレスをかけるなどの守備も、ほぼ「個」で対応していた。個だからこそ、ボールホルダーに対する寄せが早くなったINACに対して、簡単にボールを失うシーンが続いた。
そして迎えた72分、浦和は2失点目を喫した。
途中出場の京川舞のシュートが浦和の選手に当たり、シュートコースが変わるという、浦和にとってアンラッキーなゴールが入った。だが、単にアンラッキーではなく、この時も、ボールを持った岩渕真奈やフリーランニングをする京川を、人数をかけてつかまえきれなかったのは事実だ。プレスが弱まったところを、INACが見逃すことはなかった。
簡単に「やらせてくれないのが、INAC」と最後尾でチームを見るGK池田咲紀子が振り返った。練習通りの形で先制した前半と、練習の形が出しきれなかった後半。「後半」の戦い方が、きょうの敗因、今後の改善点だと誰しもが認識している。
試合は、このままのスコアで終わり、8月終わりからの後半戦で築いた5連勝は、ここでストップ。浦和のリーグ戦は残り3試合だ。次節は、浦和がアルビレックス新潟レディースと、INACはベレーザと対戦する。きょうの敗戦で、再び混戦となった。
浦和は台風19号の影響を受け、練習場が水没してしまった。復旧の目処は立っておらず、あす10月15日(火)、クラブ内で練習場の確保などが話し合われるという。試練を乗り越え、目指す場所へ。今は我慢の時だ。
GK池田咲紀子
DF清家貴子 高橋はな 南萌華 佐々木繭
MF栗島朱里 柴田華絵 吉良知夏(交代HT/→遠藤優) 水谷有希(交代HT/→塩越柚歩)
FW安藤梢(交代75分/→大熊良奈) 菅澤優衣香
《森栄次監督》
非常に残念だった。1点リードしていたのに、やられてしまったというのが非常に残念で、悔いが残るゲームだった。前半を0ー0か、1ー1で折り返せたらと思っていて、あとは、いつもやっているスタイルをとにかく守っていこうということはミーティングで伝え、後半勝負かなとフレッシュな2人を入れたが、絡みがなかった。
(先制点を奪うまでの時間帯は)非常に良い流れであったし、菅澤優衣香が1点入れたことも良いし、非常に良かった。うちの右サイドは、ある程度、ストロングなので、それを生かしていこうと、清家(貴子)には「まず、1対1になったら勝負をしなさい」と言っている。そこからのセンタリングや中に食い込むことだったり、それは、練習中も試合中も言っている。
きょうは、自分たちがボールをプレスにかけに行っているが、取りきれていないことがあり、そこにエネルギーがかかりすぎて、いざ、ポゼッションする時に体力的に残っていなかったのかなと思っている。(後半での)2枚代えは中盤をもう少し活性化したいという意図と、(遠藤)優を左に置いたのは、高瀬が結構上がってくるので、それをおさえたいなと思って、(遠藤を)左に置いて突破を狙おうと思った。最初は勢いがあったが、思ったよりもうまくいかなかった。
菅澤のところにボールがおさまっていたので、そこを起点にして、もう少しビルドアップができれば良かったが。自分たちがボールを持ちきれないというのは相手の圧力がかかっていたのかなという見方をしてしまう。
(優勝にむけてのプレッシャーが)若干あったのかもしれない。勝たなくちゃ、というところがあって。どうしても思いきったことができなかったのかもしれないし、私自身もそういうプレッシャーがあったのかなと反省点がある。自分たちができることは残り3試合をすべて勝つこと。他のチームも、特にベレーザさんは、これから何が起こるか分からないし、相手は4試合あって、うちはあと3試合。1試合多いということを考えた時に、メリットなのか、デメリットなのかは分からない。1試合多くやらなければいけない中で、もしかしたら、引き分けもあるかもしれない。対戦相手も、楽な相手ではないと思っているので、そういうことを言うと、他力になってしまうこともあるかもしれないが、まずは、うちは残り3試合、全部勝ちきれるようにやっていきたい。(新潟戦は)アグレッシブに、我々ができることを継続して、今までやってきたものを出しきれるようにやっていければと思う。
《菅澤優衣香》
負けてしまったので、悔しいのひと言。自分たちも攻めている時間帯があったが、その中で、なかなかシュートまで持っていくことができなかったことは改善点だと思う。また、高い位置でボールを回すことができなかったので、次の試合ではしっかりと改善できればと思う。
(先制点は)練習の期間も短かったが、清家からのクロスで点というのは練習の中でも出ていたので、その成果が試合で出て良かったなと思う。得意なコースでもあったので、しっかりと入って良かった。相手にボールを持たれる時間帯があっても、必ず自分たちの時間帯も来ると思っていたので、自分自身はボールが前にきた時にはしっかりとボールをおさめることと、シュートまで持っていくことは意識してプレーしていた。
(交代選手が入る中で)(塩越)柚歩が近くにいてくれるようにはなったが、後半、自分たちがボールを保持する時間がなかなかなかったので難しかった。(遠藤)優も、なるべく近くにいてくれるようには意識してくれていたので、選手が変わっても良い距離感ではできたと思っている。
試合後、監督が言っていたのは、これで終わりではないということ。選手たちはしっかりと前を向いて次の試合へ切り替えてやっていこうと、監督も言っていたし、選手の表情を見ても、そういうのがうかがえたので、自分も含めてだが、しっかりと気持ちを切り替えて、次にむけて頑張りたい。
《池田咲紀子》
ビルドアップでのボールの動かしのところで、相手が4ー4ー2になっているが、後ろで動かしていても2枚しか来なくて、2列目は来ていないから、GKのところやDFラインから、1つ飛ばしたボールや、もう1つ奥にボールを入れてみるのも良いんじゃないか、みたいなベンチからの声があった。
ポジショニングというか、みんなのポジションが定まっていないなと後ろから感じて、だからボールを動かしたくても、いて欲しいところに選手がいなかったり。チームとしてどういう風にやっていくか、1点取られた後の、1点取り返そうという気持ちや勢いが持てなかったのは、最後まで点を取ることができなかった原因なのかなと思う。難しくてもシュートで終わるとか、(今の戦いを)続けていくのか、次はこうしようとか、みんなでポジティブな良い声が出て、自分たちで1点取りに行こうというのをプレーや声で出していければ、もう少し雰囲気的にもノッていけたかなと思う。もう少し、自分のところでそれを伝えきれれば良かった。
(自分としては)アンラッキーな2失点目よりも、1失点目。しっかりと止められるように。数少ないシュートのところで、仕事ができるかが自分のポジションだと思う。
ここでネガティブにならず、最後3つをしっかりと勝ちきることで良い結果につながると信じていくだけ。(高瀬対策については)後半、(遠藤)優が入り、相手の足を止めてくれるシーンもあったので、それを自分たちの流れに持っていくことができれば良かった。最後まで押しきれずに、そこでやらせてくれないのがINACかなと思った。
試合の中は、もう少しトライをして、ベストでなくても、ベターでも、もう少し行くためにはまわり道もあって良いと思う。後半は何をしたいか、それが分からないまま、終わってしまった。
(有賀久子)