完封勝利で首位キープ!加藤千佳が戻ってきた!
9月29日(日)14時キックオフ、2019プレナスなでしこリーグ1部第14節・ノジマステラ神奈川相模原戦が浦和駒場スタジアムで行われた。前節、日テレ・ベレーザとの首位攻防戦を3−2で競り勝ち、試合数に関係なく首位に立った。ただベレーザ戦が行われた日から、森栄次監督も選手たちも「次の試合が大切だ」と口々に話していた。それがどこのチームと対戦することになっても。
ピッチには菅澤優衣香、キャプテンの柴田華絵が戻った。またベンチには8月31日(土)に左の半月板損傷からおよそ1年ぶりに公式戦復帰を果たし、以降、控えとして登録され続けている塩越柚歩、そして今年2月末、合宿中に右ひざ前十字じん帯を損傷した加藤千佳がベンチ入りした。当時は全治8カ月の見込みと伝えられていたが、順調な回復を見せてのメンバー入りとなった。メンバー発表のときにはスタンドから温かな拍手が送られた。
前半、ボールが前線でおさまりきらない中、17分、栗島朱里のパスから右のスペースに走り込んだSBの清家貴子が鋭いボールを入れることを選択。本人は試合後に「あれはクロスだった」と話したが、相手GKが反応するも、清家のボールの勢いが勝り、ゴールへとすいこまれた。浦和が先制点を奪った。その後、ノジマステラ神奈川相模原にも試合のペースを握られる。そこは通算200試合出場を達成した長船加奈やGK池田咲紀子、ボランチの栗島朱里と柴田華絵らが体を張って守り、封じた。
追加点が欲しくなってきた。2点目が大事だよ!と言わんばかりに、39分、安藤梢がドリブルで抜け出し、攻撃を引っ張る。安藤は「1−0だったので、まだまだ危ないスコアだなと思った。この試合は勝たなければいけないと分かっていたから、2点目を取りにいくよということをプレーで出していきたいなと思ってのドリブルだった」と振り返る。
再三訪れたセットプレーのチャンスも決め切れず、前半は1−0で終了。
後半から遠藤優に代わり高橋はながピッチに立った。前線に起点が増えたことで菅澤も少しずつ前を向く回数が増えた。だが、やはりまだ本調子ではないのか、ベンチの森監督は菅澤を下げて塩越柚歩を投入した。攻撃的な位置でディフェンスが密集した狭いエリアも、得意のスピードに乗った細かなタッチで抜け出し、攻撃が活性化された。
74分、混戦の中で塩越の抜け出しからこぼれたところに高橋がフリーで受けてシュート。待望の追加点が入り、2−0とリードを広げた。
結果、ノジマステラ神奈川相模原に2−0で完封勝利。リーグ戦再開後、勝利を続けている浦和レッズレディース。ここで、きょうの試合でゴールを奪った清家と高橋が初選出されたなでしこジャパンの活動となり、10月14日(祝・月)にINAC神戸レオネッサとカシマサッカースタジアムで対戦する。キックオフは13時。最後まで落としていい試合などないが、優勝経験のあるINACとの対戦は、ベレーザ戦同様、総力戦で挑むのみ。浦和の力が試される。
きょうの試合後には、通算200試合出場を達成した長船加奈を称え、チームメートが見守る中でセレモニーが行われた。インタビュー形式で答えていく長船は、2011年の東日本大震災で味わった思いを、サッカーがあったから乗り越えることができたと、サッカーとの出会いや仲間、応援してくれる人たちへ感謝した。何よりも一番の理解者であり、応援してくれる存在の母と祖母が大阪から駆けつけた。サプライズ成功で、これには長船の目から涙があふれ出た。とても明るい母のスピーチと、そのスピーチにこもった優勝を期待する思いをサポーターを含めて、全員で共有した。本当に技術面も人間性も素晴らしい選手が浦和にはいる。心地よいセレモニーだった。
GK池田咲紀子
DF清家貴子・長船加奈・南萌華・佐々木繭
MF栗島朱里・柴田華絵・安藤梢・水谷有希(→交代76分/吉良知夏)・遠藤優(→交代☆46分/高橋はな)
FW菅澤優衣香(→交代68分/塩越柚歩)
《森栄次監督》
ケガあがりの選手がいたので、(どこまでできるかを)心配していた。パフォーマンス的に言うといつもとはちょっと違うなというのはあった。前半を通り越えてくれればいいかなと。きょうは全員で勝ち取ったというか、サブの選手も含めて「全員でやっていくよ」とは言っていたので、プランどおりにいったかなと思う。
(前節は日テレ・ベレーザに勝利したが)あまり浮かれるのではなく、一戦一戦、次の試合をというところで言うと、きょうの試合はとても大事な試合だった。相手はガタイが良く、ある程度チーム力が高いので、前からプレッシャーを掛けていこうという準備はしていた。
(ベンチの層の厚さは)塩越柚歩、徐々に治ってきた加藤千佳も使えるなと思っているし、長嶋玲奈もそうだし。その辺の選手が使えるので、逆に特に中盤だが、そこで競争させるようなイメージを持ってやれれば、もう少しまた層が暑くなってくるのかなと感じている。
塩越柚歩をボランチにしちゃうとディフェンスのところが要求されてしまうので、1つ前のちょっと軽めのところに置くと、わりと攻撃が好きなタイプ。前にかかりやすいかなと。相手もイヤかなというのはあった。トップ下や右、左のところでイメージしている。思った以上にできているかな。ただ、もちろん、これが頭からだとどうなのかなというのはあるが、途中からああやってアクセントになってくれると非常に良いかなと思う。「みんな使えるよ」ということをメッセージとしてやっているので、とにかく全員で。例えば途中から入る選手には「もう一回ギアをアップではないが、それができるようにチームを盛り上げてくれ」と言っている。
(なでしこジャパンで次節までに時間はあるが)要求しなくてはいけないのは中盤のディフェンス。あそこで取り切れると、もっと強さが出てくるのだが。まだちょっと緩いというところはある。ただあまり要求しちゃうと今度は壊れちゃう。彼女たちは一生懸命にやるのでうれしいのだが、壊れては困っちゃうんだよなという。(加減が)難しい。
《柴田華絵》
前節で勝ったことに浮かれることなく、この試合が本当に大事だなというのはチームで言っていた。みんなでしっかりと気を引き締めて臨んだ。
《清家貴子》
前半、早めの時間帯に先制点を取ることができて、ゆっくりと自分たちらしくゲームを進めることができた。みんなベレーザとの試合で気を抜くことなく、きょうが大事だぞと意気込んでいたので、2−0という結果は準備によるものだと思う。左サイドから崩して、右サイドの空いた自分のところにボールが入ってきた。正直あれはクロスだった。たまたま入った。でもチームとして、相手のディフェンスとGKの間にどんどんとボールを入れていけば、ああいうアクシデントも起こると思う。その中でもシュートを打っていければ、チーム全体の得点が上がっていく。どんどん続けていきたい。
(後半は)前半でちょっと縦に早く行っていて、カウンターを食らうシーンがあったので、そこを修正しながら、さらにボールを動かしていこうとしていた。あとは(途中出場の)タカ(高橋はな)が前でターゲットになってくれた。
(なでしこジャパン初選出は)いまのレッズレディースというチームに支えられて自分が選ばれたと思うので、自分にできることを精一杯出し切ってきたい。代表期間が明けると、大事なINACとの試合が控えているので、ケガをしないように。でも、どんどんとレベルアップして良いコンディションで迎えたい。
《安藤梢》
森さんがミーティングで、ベレーザに勝ったけれども、まだ1試合にすぎない、まだ先はあるということを言って気持ちを締めてくれるので、(ベレーザに勝利した次の試合が大事だということは)私が言わなくても、みんなも分かっていた。みんなを見ていて、気持ちが締まっているなと感じていた。
監督が1−0で守り切るようなサッカーをしないで、2点、3点と取りにいくという、攻撃的なサッカーをするのだということを言ってくれる。それを自分も表現したいなという気持ちがある。そうやって監督が言ってくれることが大きくて、だから自分も守りに入ることなく、2点目を取りにいくぞという攻撃的な姿勢を、プレーで見せて引っ張りたいなと思っている。
(代表期間に入る)しっかりとリフレッシュすることも大切だが、次のINACとの試合がヤマだと思うので、しっかりと準備して勝ちたい。
《高橋はな》
勝つことができて何よりも良かった。前回のベレーザとの試合に勝利できたことで、逆に他で落としてしまったら意味がないという気持ちは持っていたので、優勝のためにもきょうの試合は落とせないという気持ちを持って臨んでいた。
追加点が求められていた部分と、前からの守備もやっていこうと思っていた。自分の目の前にボールがこぼれてきた。それを冷静に決められて良かった。
次はINACで、そこにはまだ勝てていない。大きな試合になる。結果を残すためにチームでしっかりと良い準備をしたい。(なでしこジャパン初選出は)緊張もあるが、とにかく楽しんで、どん欲に思い切りチャレンジしたい。
《塩越柚歩》
チームが好調の中で、自分がなかなかその力になれていないというか、試合にもなかなか絡めなくて、先週のベレーザ戦もそうだが、勝ったのはうれしいけれど、悔しさ半分という気持ちで。きょうは入って、もっとできたなというのが自分の中で思った、率直な感想。
森さんには、(高橋)はなの周りをウロチョロ動き回って、ボールにたくさん関われと言われた。自分らしいプレーをしろということだなと思ったので、それを意識しながら点を取らなきゃとか、取られないように頑張ろうというより、自分ができることをとりあえず頑張ろうと思って、あまり気負わずに入ることができた。
(ゴールシーンは)正直、どうなったのかは分からなくて、パッと振り向いたら(高橋)はながフリーで打ってくれたので、本当に良かった。
(狭いところでのプレーは)得意だなと思っているんですけど、それでちょっと空回りしたり、全部が全部うまくいかなかった。それはそういうものなのだが、それで(ボールを)なくしてしまったり、チームがしんどい時間帯だし、もっとボールをキープできたらと思った。
(前回の復帰試合とは)試合状況も違うし、自分の調子も上がってきている中で、この間は「復帰おめでとう」とか「出られて良かったね」というレベルだったが、今回からはもっとチームの力にならなくちゃというか、ケガしていたとかは言い訳にはならない状況になっているので、そう考えると、もう少しできたかなとは思っている。
サブの選手が出て活躍するのはうれしいが、うれしさだけじゃないのはもちろんで、その中で交代枠を使いきらないときもあるので、悔しいなと思いながら、もっと頑張らなきゃなという思いが先週まで強かった。
《加藤千佳》
駒場のピッチをスタンドから見てきた。ひさびさにピッチ側から見ることができて、こんな雰囲気だったなと思い出した。去年の11月ぐらいから手を折っていた。自分のケースは順調だったようで、それにはとても救われた。きょうの試合は、準備はしていたが、前日に言われた。優勝を目指して頑張りたい。
(サポーターからの声には)ここに集まる人たちは温かくて、本当に戻ることができて、本当に良かった。ここからチームに貢献できるように頑張りたい。
これだけのケガは初めてだった。外から試合を見ることがあまりなかったので、上から全体を見ることができるので、初めての経験という気持ちがあった。自分の同じポジションの子の動きを見たり、全体のボールの流れを見たり、1人の観客として興奮しちゃうときもあったけれど。
(有賀久子)