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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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決定力のある選手が前に欲しい。足りないのはそこ(J1第16節・鹿島戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:6月4日(日)に埼玉スタジアム2002で行われた明治安田生命J1リーグ第16節、鹿島アントラーズ戦は0−0のスコアレスドローに終わりました。

都築:この試合は現地で見ていましたが、試合前から非常に良い雰囲気で、最高の空気をサポーターが作ってくれていましたね。選手のモチベーションも相当上がっていたと思います。ただ、ちょっと鹿島のほうが勢いがあったかなという試合でした。

鹿島はかなり縦に速くて、シンプルで細かいプレーをどんどんやってきていました。試合序盤にセンターサークルからのパス2・3本でシュートを打たれたシーンなど、鹿島は勢いあるなと感じさせられました。

それに対して、レッズの守備は後手後手というか、狙いどころが定まらなくて、奪いに行くとダイレクトでつながれて、うまく運ばれてしまっていました。そこから鹿島の最初のチャンスにつながりました。鹿島がモチベーション高く良い入り方をしたなと感じましたね。

縦に速いだけではなくてワイドに、特に左サイドを使って鹿島はどんどん攻めてきていました。レッズはショートカウンタ―を食らわないように、中盤であまりリスクのあるプレーをしなかったのかな。攻撃になったときも、縦に速いシンプルなカウンターでチャンスはあったと思います。

ただシュートで言うと、ブライアン・リンセン選手が無理やり打った枠外のシーンくらいでした。前半の終盤はレッズがある程度攻めていましたが、シュートまではなかなか持ち込めなかったですね。

前半は鹿島にペースを握られている感じだったと思います。ディエゴ・ピトゥカ選手の怖いミドルシュートを西川周作選手が防いだシーンもありましたが、後半も似た位置から、枠外でしたけど打たれるシーンがありました。

あそこで打たれるということは、DFラインが下がりすぎちゃっていたのかなと思いますね。全体的にに見ても低かったと思いますし、鹿島の縦に速い攻撃が怖かったのかなというのと、それをさせなかったのはあるのですが、その意識が強くてラインが下がった部分もあったのかなと思いました。

RP:ただ、FW2人には決定的な仕事をさせませんでした。

都築:鈴木優磨選手と垣田裕選手はボールが収まりましたし、そのあとの動き直しもやってくる選手だったのでつかまえづらかったと思いますが、アレクサンダー・ショルツ選手とマリウス・ホイブラーテン選手のCB2人が集中していて、最後のところではしっかり潰しせていました。守備ラインは本当に安定していると思います。

レッズの攻撃は左サイドから何回かありましたが、中で合わせることがあまりできなかったですね。人数のかけ方にも問題はあったでしょうし、興梠慎三選手が消えちゃっていましたね。下がって受けようとしていましたが、そこから前に行くパワーがなかったのかなと。

たぶん、シュートを打ってないんじゃないですかね(公式記録でも興梠選手は0本)。ポストプレーで下がって行くことが多かった中で、そこから前に行けなかった。鹿島の守備意識も高かったと思います。そこを何とか、興梠選手が下がってきたスペースを使うような動きが、関根貴大選手にあってもよかったかなと思います。

RP:前半のシュートは鹿島6本、浦和3本でした。

都築:ピンチの数も、浦和のほうが多かったですかね。CKのセカンドボールから、鈴木選手にこぼれたシーンがありましたが、非常に難しい対応でしたが西川選手がよく防ぎました。ただ、本当に決定的なピンチは試合をとおしてもその1本くらいだったかなと思います。

レッズとしてはどちらかと言えば劣勢な試合で、なかなかボールをつながせてもらえない 中盤でも受けられない、展開できない時間が長く続いていました。もうちょっと余裕をもってボールをつなげれば面白かったのですが、鹿島のプレッシャーも速かったですから。

お互いの最終ラインが頑張る緊迫した試合の中で、0−0という結果は妥当だったのかなと思います。レッズも勝負強くなってきていて、失点する雰囲気もあまりなかったですが、確実に勝ち切るためには得点部分の改善が必要ですね。

最後のホセ・カンテ選手のヘディングシュートは惜しかったですが、あの場面のように、ワイドに使って動かしながらの攻撃をしていきたいですね。シンプルに縦だけとか、片方のサイドだけでは、なかなか崩せないのかなと思います。

酒井宏樹選手も推進力は見せましたが、なかなか攻撃につながるところまで行けませんでした。終盤には自分が奪われて、自分で奪い返してシュートまで行ったシーンもありましたが、ああいった中盤の攻防がもうちょっと見れればもっと面白かったかなと思います。

やっぱり鹿島も、モチベーションが高くなる試合では勝負強いですね。そこを掻いくぐれなかったですし、点を取れませんでした。ただ、負けはしなかったのでネガティブに捉える必要は無いと思います。

この試合でもスタメンも変わっていましたが、安居海渡選手と伊藤敦樹選手という先発では珍しい組み合わせでした。後半から岩尾憲選手が入りましたが、伊藤選手のバランス感覚は良いと思いますし、組み合わせも固まってきていますかね。過密日程で疲れも溜まっていますし、この試合はそれほどでもなかったですが、だんだん暑くなってきますから、うまくやりくりしながらやってほしいですね。

あとはやっぱり、決定力のある選手が前に欲しいですね。点を取るだけの選手でもいいのですが。足りないのはそこですかね。前の組み合わせというか、誰を使うかが難しいですかね。カンテ選手もここ最近結果は出しましたが、スタメンでは出れていません。守備のところも頑張っていますが、点を取るのも大事なので。得点して勝点を稼いでいくことが一番大事だと思います。

RP:連戦もようやくあと2試合で、水曜日は天皇杯2回戦、日曜日がリーグ戦の横浜FC戦になります。

都築:天皇杯はメンバーを入れ替えるでしょうね。横浜FC戦が終わればひと息つけますが、取りこぼさないように勝っていって欲しいですね。勝ってほしいというか、勝たないとダメですね。


RP:ありがとうございました。


(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)
 
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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