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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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崩しの質は、フロンターレのいい時と同じくらい(J1第22節・清水戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:7月16日(土)にIAIスタジアム日本平で行われた明治安田生命J1リーグ第22節、清水エスパルス戦は2−1でレッズが勝利しました。

都築:いままでのいい流れが、そのまま継続された試合だったと思います。ボールも良く動いていたし、ビルドアップのところで奪われてピンチというのもあまりなかった。一発目のミドルシュートなど、前半2、3本ピンチはありましたが、そのあとは特に危ない場面もなく、非常に安定した戦いができたと思います。

それができたのは、ここ最近の良かった試合のように、ボールをよく動かしてピッチを広く使って、相手がスライドしてくるところにどんどん選手が入りこんでいけていた。それを相手がつかまえきれないシーンがかなりありました。

その原動力となっていたのが、明本考浩選手や酒井宏樹選手のオーバーラップでサイドを使えたことで、そこに伊藤敦樹選手などが入り込んでくる。小泉佳穂選手はちょっと最近目立ってないですが。

1点目などは特にそうでしたが、ゴール前に入ってくる選手がいましたし、関根貴大選手もアグレッシブに動いていた。2連勝している流れの中で、そのままできていましたね。しっかり動いて相手を崩して、しかもチャンスが得点に繋がっています。

ビルドアップの質というところでは、ほかのチームを見ていてもいまのレッズは相当レベルが高いのかなと思います。ただつないでるだけという消極的なビルドアップをしていた時期もありましたけど、いまはしっかり運べて、縦パスもどんどん当てています。岩尾選手のゲームメイクも、最近は非常にいいですね。彼が低い位置にいても、高い位置にいてもチームとして機能する動きをしているのは印象に残ります。

いい流れでいい攻撃ができていて、守備も連動できている感じはありますね。ただちょっと、先ほども言いましたが小泉選手があまり目立たない。彼の特長は、岩尾選手のようにゲームを作るところだと思いますが、いまは岩尾選手のところで完結しています。

いまはどちらかというと、縦に勝負しにいくポジションにいることが多いので、彼のポジションはあそこじゃないんじゃないかなとも思いますね。ただ伊藤選手と岩尾選手がここ数試合、非常にバランスよくやっていますので、そこに入るのは難しいですね。

左サイドの明本選手も攻守に効いていて、やっぱりFWよりも生きるのかなと思いました。松尾佑介選手も献身的に、下がって受けてさばいて動きなおすを繰り返しています。ここでかなり相手DFは引っ張られるので、相手にとっては嫌な選手ですし勝負にも行ける。このあたりから、いまは攻撃のバランスが良いと思います。ただダヴィド・モーベルグ選手はこの試合はパッとしなかったですかね。アシストのアシストはしましたが。

RP:先制点は前半終了間際の時間帯でした。

都築:1点目のシーンで非常に良かったのは、明本選手の飛び出しへの関根選手のパスですね。一発で前を向いて、さばけるし勝負にも行ける状況で、ペナルティボックスを広く使った崩しでした。関根選手のミドルシュートのこぼれ球を松尾選手が押し込みましたが、モーベルグに対応した左SBの選手が残っていました。DFとしては、モーベルグ選手がバックパスをした時点でラインを上げておかないといけませんでした。

何にせよ、前半は清水も元気があったので、この1点は非常に大きかったですね。選手交代もかなりうまくいっていると思います。江坂任選手は前回の試合でも、入ってすぐに得点に絡む動きをしていました。この試合も入ってすぐに速くて良いクロスを上げました。明本選手が飛び込んだからこそのオウンゴールでしたから、そこまでの崩しもよかったです。

追い越していく動きがどんどん出ているのは、誰が見てもわかる大きな変化だと思います。良い流れで来ているので、継続してやっていきたいですね。ゴール前の崩しもレベルが高くなっていると思いますし、得点だけでなく多くのチャンスが作れています。あともう少し決定機を得点につなげられれば、かなり楽になりますね。

RP:失点シーンについてはいかがですか。

都築:まず気になったのは、けっこうミドルシュート打たれていたことですね。前半の酒井選手がクリアできずに打たれたシーンや、前半すぐの西川選手が防いだシーンなど、FKで得点した山原選手を見ていると、簡単に打たせるのもリスクです。

FKについては、実際にピッチに立ってみないとわからないのはありますが、画面上はそこまで揺れたようには見えませんでした。ただパンチ力はあったので、GKからすると大きく動いたというか、初動がGKから見て左に行ったと思います。

その後に、同じような位置で彼がフリーで打てるシーンがありました。実際は打たなかったのですが、ああいうところで厳しく行っておかないと、失点のリスクが出てきます。ただ、そのあたりを含めても、いまは結果も出て内容も良いので。崩しの質だけで言えば、フロンターレのいい時と同じくらいのことができていると思います。あとはどこまで決定機を決められるかですが、非常に良いサッカーをしていると思います。

RP:後半は選手交代など、かなり早い段階で守備にシフトしたようにも見えました

都築:清水がどんどん選手を入れ替えてきましたが、最終的な形はチアゴ・サンタナ選手とオ・セフン選手にクロスをどんどん入れようというものでした。時間帯と清水の狙いを考えると、あそこでラインを下げて守ったのは、結果が出たからではありますが、今回は正解だったと思います。

いまはとにかく確実に勝つことで、ディフェンスのバランスを崩してまで追加点を取りにいくことはないかなとも思います。ポゼッションしながら時間を使うこともできたと思いますが、多少なりとも清水の攻撃への人のかけ方が強くなってきたので。まあ結果的に失点していたら『下がりすぎだ』とは言われてしまいますが。確実に勝つ方を選択したと思います。

清水の攻撃もクロスでいくのか、神谷優太選手が裏で勝負するのかとシンプルだったので、レッズとしては楽だったのかなとも思います。実際にクロスボールを上げられてもしっかり守れますからね。そこは強みでもあるので、あの時間帯でリードされている相手が攻撃に人数をかけてきた。そこで勝ち切るためにちょっとラインを下げたのは特に問題はなかったと思います。

RP:このあとはパリサンジェルマンとの試合もありますが、リーグ戦は2週間空くことになります。

都築:もったいないですよね。いまの良い流れを維持して順位を上げていきたいところだったので。ただ、これはどのチームもそうなので、選手層もまた厚くなってきているので競争がさらに生まれればと思います。点を取れるようになってきたので、それを維持して意識してやってくれればと思います。パリサンジェルマン戦も、消化試合、親善試合という意識だとただ試合をやってるだけになってしまうので、意識をもってやってほしいですね。

RP:ありがとうございました。

(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)
 
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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