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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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守備意識が高かった。相手のほうが内容はいいが、勝ち切れたことに意味がある(J1第26節・横浜FM戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の田中直希記者です。


RP:9月16日(日)に行われた明治安田J1第26節・横浜F・マリノス戦は2-1で勝利しました。一度追いつかれながらも、武藤雄樹選手の決勝点で4試合ぶりの勝点3です。
都築:柏木選手、ファブリシオ選手ら、けが人がいなかった中でよく勝った。オズワルド・オリヴェイラ監督はベンチ入り停止処分の2試合目だったが、彼は上からよく戦況が見えていたんだと思う。スタンドから監督が指示を出すラグビーのように、彼の意思はピッチ内にも伝わったんじゃないか。すぐに、ピッチ内での問題が解決できていたと感じた。

RP:
全体で見れば、相手ペースの時間も長かったように感じます。
都築:前半はマリノスペースだった。最初のほうはレッズがアグレッシブに戦っていて、橋岡選手のクロスから興梠選手へ、また興梠選手が素晴らしいトラップをしてチャンスも迎えた場面もあった。ただ、その後はポゼッション率もマリノスが高く、主導権を握っていたと思う。
マリノスはペトロヴィッチ監督の考え方に似ていて、戦い方を曲げない。一つ言えたのは、前回対戦時よりも多少最終ラインが低かった。あのときはガンガン最終ラインの裏を狙える感じだったが、今回はそうもいかなかった。彼らのポゼッション率が高いのはいつものこと。それに対して、レッズはつながせておいて、ボールの取りどころを定めたかった。でも、意外とレッズのポゼッションする時間もあった。


RP:
守備陣の評価については。
都築:相手には、際どいクロスを入れさせてしまったた。上げさせてはいたが、最後のところでしっかり守れていたのも事実。特に岩波選手が体を張って守っていた場面が印象的だった。それに、マウリシオもGKとDFの間に入ったボールに対して、しっかりと寄せていた。マリノス一番の決定機でも、また裏へ出されたボールも岩波はよく止めていた。そうした、守備の意識が高かった試合だ。ただ、全体の下がってしまったので、中盤とディフェンスラインの間で相手にプレッシャーがかからなかった。つまり、パスの出し手にプレスがかかっていない状態。プレッシャーに行っても、行ききれていないことが見られた。守備でハマらなかった点は見逃せないところだ。

RP:
そんなときに決めた先制点の意味は大きかったですか。
都築:前半、最後の最後に宇賀神選手がいい形で点を取った。セットプレーの流れで、こぼれ球をよく抑えてシュートを決めた。宇賀神選手としては前にあった密集を抜けてくれたらいいというシュート。そこを抜けてきたので、GKとしてはかなりボールを見えづらい状態だったと思う。いい流れではない中で、前半のうちに点をとれたのは大きかった。

RP:
ただ、後半に一度追いつかれてしまいます。
都築:後半、マリノスが前に来ていたというのはあったが、結構相手左サイドからの単調なクロスという攻撃が多く、レッズとしては守りやすかったと思う。中に切り込んで上げらたシーンはピンチになっていた。天野が左から単純に上げていたのは防げていた印象。一度、伊藤選手にヘディングでシュートまでもっていかれたのはあったが…。ああいう場面を連発で作られていたら、非常に難しかったと思う。ピンチに関しては、西川選手がよく防いでくれていた。よく守っいてたけれど、最後で跳ね返すというのはリスクがある守り方だ。マリノスはしっかりパスを回して崩そうという理念がある。でも、最後のところで決めきれないとか、課題が向こうにはあったと思う。攻撃をやり続けるスタンスで、長い目で見たら面白くなると思う。良いサッカーしていると思うが、守備にリスクあるサッカーしている。一本、興梠選手が裏に抜けたプレーがあったが、かなり長い間フリーランしているのに、ついていかない場面が相手のDFには見られた。
ただ、レッズの失点の形も良くなかった。橋岡選手が足をつって、ヒラ(平川選手)が出た。そのすぐあとに、ヒラが相手を捕まえ切れず、あそこで切り込まれ、DFが対応できなかった。

RP:
追いつかれてイヤな雰囲気になった時間帯もありましたが…。
都築:非常に簡単な得点の形で、武藤選手が決めてくれた。守備側としては、あんな簡単な攻撃で…と思っているかもしれない。まず、青木選手に対して守備のプレッシャーが強くなかった。そこに厳しくいけなかったマリノスにまず問題があった。
ポゼッション率として相手が高く、内容も含めてやりたいサッカーを見えているのはマリノス。その相手に勝ち切れたのは自信になる。3位も見えなくない位置にいるわけで、今後に期待が持てる1勝になった。

RP:
決勝点の武藤選手はひさびさのゴールでした。
都築:その点もよかった。あとは、興梠が点をとれるようになればいい。チャンスはかなりあるだけに、もったいない。
セットプレーでしっかり守れたのもよかった。天野選手は質の高いボールを入れてきていたけれど、それに対する守備はパーフェクトに近いと言っていい。リードしてからは、全体として守り切るサッカーに切り替えていた。

RP:
柏木選手のいなかった中盤については。
都築:長澤選手のプレーは悪くないが、長澤に入ると縦に早い攻撃になりがち。中盤でタメる展開にはならない。前線でタメを作れるファブリシオがけがで今季絶望という状態なだけに、タメて後ろから攻撃で人数をかけて入っていくプレーをしたいのだが…。相手がマリノスだったからその攻撃をとったのかは不透明だ。でも、サイドチェンジを使いながら相手を揺さぶって攻撃しないと。待ち構えているところにパスを入れていっても、相手は守りやすいわけで。決してチーム状況が良いとはいえない。
ただ、勝てたので次につなげてやっていければいい。

RP:
次節は神戸戦。チケットは完売です。
都築:神戸はなんとかイニエスタが出そうだ。彼のところにボールを集めてくる。ポドルスキもそう。相手としては、的が絞れる。そこに対して、どれだけ厳しくいけるか。彼らをつぶさないと、かなりいいパスが出てくる。ちょっと内容は二の次、三の次で、結果を求めていってほしい。


RP:ありがとうございました。


(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』田中直希記者)

[記事リンク]2017年シーズン浦和レッズ試合情報まとめ
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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