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浦和レッズ第三者委員会公開シンポジウムを開催

(有賀久子)

浦和レッズ第三者委員会公開シンポジウムを開催

2月16日(金)、浦和レッズは、浦和コミュニティセンター内・多目的ホール(さいたま市/JR浦和駅東口駅前・浦和パルコ10階)で、『浦和レッズ第三者委員会公開シンポジウム』を実施した。

昨シーズンの8月2日(水)、CSアセット港サッカー場(愛知県名古屋市港区)で行われた天皇杯JFA第103回全日本サッカー選手権大会・ラウンド16(4回戦)での敗退後、クラブ側とゴール裏で話し合いを進めていた一部の浦和レッズサポーターに対して、対戦相手の名古屋グランパスのサポーター2名が、バックスタンドから発した言葉を挑発と受け取ったことをキッカケに、一部が名古屋側に対して、暴力行為や横断幕などの損壊、フィールドへの飛び降りなどを行う、試合運営管理規程違反事案が発生した。

これを受けて、日本サッカー協会より処分が通達され、その内容は、今シーズン2024年度の天皇杯(天皇杯JFA第104回全日本サッカー選手権大会)の参加資格の剥奪、けん責(始末書の提出)という重い処分となった。

発生以降、クラブでは、処分基準や処分および処分解除決定の運用プロセスの見直し、再発防止施策などを策定すると共に、外部アドバイザーからなる第三者委員会(委員:8名)を立ち上げ、11月14日(火)に第一回・第三者委員会を実施。以降、4度の委員会が開かれ、16日(金)その分析結果の報告、さらに事前募集で集まったサポーターとの意見交換の場が、公開シンポジウムという形で開かれた。広報部は、定員300名に対して、参加者185名、メディアは32名と伝えている。

武藤芳照(むとう・よしてる=☆本委員会委員長)/一般社団法人東京健康リハビリテーション総合研究所所長、東京大学名誉教授
結城和香子(ゆうき・わかこ=☆本委員会副委員長)/読売新聞東京本社・編集委員
松瀬学/日本体育大学スポーツマネジメント学部・教授
高橋義雄/筑波大学大学院人間総合科学学術院・准教授
山本浩 /法政大学スポーツ健康学部・教授
ヨーコゼッターランド /日本女子体育大学体育学部・准教授
望月浩一郎/パークス法律事務所・弁護士
竹村瑞穂/東洋大学健康スポーツ科学部・准教授

阿部勇樹、原稿にほぼ目を落とさず、思いの丈を



『浦和レッズ第三者委員会公開シンポジウム』の第2部には、指定発言者として指名された浦和レッズOBで、現在、浦和レッズユースでコーチを務める阿部勇樹さんが登壇し、選手時代から感じていたことなど、率直な思いを口にした。

どちらかと言えば、饒舌ではない。だが、この日は、用意したであろう原稿に目を落とすことは、ほぼなかった。時に手振りを入れながら、ところどころ語気を強めながら、思いの丈を、どこかで聞いているはずの当該者たちに、そして多くの理解者たちに語りかけた。

第2部の冒頭、第三者委員会の武藤芳照委員長は、指定発言者に阿部氏を選定した理由について、次のように話している。「私どもの委員会の議論の中で、委員会メンバーとは別の立場で、サッカーの現場、つまり、選手、コーチ、チーム、クラブの、現場の立場から当該事案および、その対応について、率直にどなたかに登壇頂きたい、ということになりました。人選につきましては、委員会の中で、それぞれ各委員から推薦を求め、全員一致で決めて頂きました。ただし、ご本人の都合もあるので、ご本人にご連絡をして、お願いを致しましたところ、幸いにも快諾を頂きました。選手として輝かしい実績を有し、現在、浦和レッドダイヤモンズのユースコーチをお務めの阿部勇樹さんに登壇を頂きます」。

このように阿部氏がサポーターに言及したのは、自身の引退会見での発言以来かもしれない。このプレシーズン、阿部氏はユースの選手たちを引率し、沖縄・金武町入りした。ビブスを着用し、共に汗を流すこともあった。選手が背負う強い責任を感じているからこそ、思うことがある。
阿部氏は、次の通りに語りかけた。


今、ご紹介して頂きました指定発言者として参加させて頂きます阿部勇樹です。
よろしくお願いします。

今回の、2023年8月2日のことに関して、最初に聞いた時に、僕自身、思い出したのが2014年の3月。横断幕の件があり、その時は無観客試合を行いました。その時、選手として感じたことは、誰もいないこのスタジアムで、Jリーグの試合をする。イメージはしていたけど、正直、ピッチに立って、普段やるトレーニングマッチだったり、そういった中で戦っているのかな、という印象を持ちました。

それと同時に、改めて、常に多くのサポーターの方が一緒に戦ってくれている、大きさというのを感じた無観客試合でした。

そして今回、天皇杯に出場できないという処分が下されました。この試合に負けてしまったというのも、もちろん、あると思います。そして、その年の5月、ACL3度目の優勝を勝ち獲りました。その結果もあり、サポーターの皆さんの期待も、間違いなく大きかったと思います。

その中で、敗戦。なかなか受け入れるのが難しかったんじゃないかなと思っています。しかし、そういった問題、事案が起きたことによって、いろんなところに影響、ダメージがあったと思います。チームに対しては、まぁ、もちろん、経済的なダメージも、もちろんあったと思います。
選手への影響としては、やはり、試合。試合数が減るというところは、もちろん、リーグ戦がある、それだけ戦えば良い、だけではなくて、浦和レッズは、本当に多くの選手がいます。そして、若い選手。彼らの、試合機会、ということを考えると、試合があった方が、数多くあった方が、選手は、もちろん、日程的にキツいかもしれませんが、試合機会を確保するという意味では、非常に重要な試合でした。それを考えると、非常に選手にとってダメージは大きかったんじゃないかな、と思っています。

そして、サポーターの皆さまも、やはり、ダメージはあったと思います。日頃から、この愛する浦和レッズのチームを応援できない。その試合数が減ってしまう。というのは、少なからず、思って頂けたんじゃないかなと思っています。それは、皆さんが、他のチームだと分かりません。個人の選手を応援して、あ、この選手を引き続き、というのが多いのかもしれませんが、浦和レッズのサポーターの方は、本当に浦和レッズが好きで、浦和レッズのために一緒に戦って、応援してくれるという方たちが非常に多いと思っています。なので、いろいろ全体を考えると、皆さんが受けたダメージも本当に大きいと思います。

トップの試合、アカデミーの選手もそうですし、子供たちは見れる機会を失った、とも思っています。アカデミーの選手からしたら、やはり、トップの選手は憧れの存在です。それが、少なくなるのは非常に残念だなぁと思っています。そして、アカデミーの選手にいつも伝えているのは、もしかしたら、今、ユースの年齢を見ておりますけど、ジュニアの選手、ジュニアユースの選手、そういった選手は、もしかしたら、君たち、ユースの選手が憧れの存在かもしれない。身近な存在として。だから、振る舞いだったり、誰に見られてもおかしくない、そういった行動をしようよ、という話をしています。

それは、もちろん、トップの選手も、アカデミーの選手に見られている。街で歩いていて、サポーターの方も見ている。もちろん、他のチームのサポーターの方も見ている。そういったところで、サッカーとは離れているところですけど、浦和レッズを背負って、エンブレムを背負って、やっているといったところは自覚しないといけません。

サポーターの皆さんは、どうでしょうか?たとえば、子供たちがスタジアムへ行って、皆さんの素晴らしい応援、雰囲気、そういったものに憧れて、あぁ、彼らのようになりたい、俺も、浦和レッズを応援したい、そういった子供たちは多いと思います。そういった子供たちに、本当に、俺たちのように見てやってくれよ、という姿を見せれているのでしょうか。もちろん、数多く見せてくれてます。そういった声も聞きます。

だけど、1つのことで、そういったものが失われてしまう。皆さんが、一生懸命になって積み上げてきたものが、なくなってしまう。壊してしまうのは、やはり、簡単だと思います。

こういったことがあった後が、やはり、大事じゃないかなと思っています。それは、もちろん、クラブもそう。浦和レッズ側も、こうなる前に、もっとやれたことはあるんじゃないかな。今まで曖昧にしていた部分で、ハッキリとノーと言えなかった。それは、クラブ側の責任でもあるかなと思っています。それは、現役時代も、そう感じていました。

けど、クラブの人は、選手を守ったり、サポーターの方を守ったり、いろんなところで力を貸してくれました。逆に、もっと、サポーターの方が、試合、不甲斐ない試合をすれば、選手にぶつける。ためこんだものを、どこか発散させる機会がもしかしたら、必要だったのかもしれません。
不甲斐ない試合をした後、なかなか、バスが出れないといった時もありました。多くの方が、選手に意見をぶつけたい、という思いを持って来てくれていた、と思います。少し時間経って、選手が降りて、その意見を聞く。僕が思うに、降りても、殴られることはない、と思っています。皆さんが、サポーターの皆さんが、選手に伝えたい。それを聞いて欲しいという思いが、なかなか実現できなかった。時間かかってしまった。それによって、バスも遅れて、次の日、移動だったり、という中で、お互いに解決策を見つけられる、過ごしていた、と思います。

今まで、皆さんと、このクラブ全体で作り上げてきた、この浦和レッズが、正直、盛り上がらないと、Jリーグが盛り上がらないと思っています。こういった事案で盛り上がる、いろいろな方に知ってもらうんではなくて、もともとある、この素晴らしいクラブ、皆さんの力、というのを、もっと違った形にぶつけて、進んでいかなければいけないのかな、と思っています。

それには、やはり、全員が、浦和レッズ全体、現場もそう、会社の方もそう、もちろん、サポーターの方もそう。同じ仲間として、やっぱり自覚していくこと。やっぱり、地域に活力を与える、盛り上げる、浦和を、さいたま(埼玉)を、Jリーグ盛り上げて、日本をを盛り上げる。それで、アジアへ行ったんですよね、みんなで。で、世界へ行った。みんなが1つになったからこそ、そういったことが出せてきたわけですよ。

僕は、2021年に引退しました。その後に、浦和レッズが、本当に1つになったら、どんな力が出されるのかな、ということを、インタビューなどで話をさせて頂きました。ACLを獲った時など、あ、1つになったのかな、とも思っています。でも、本当の意味で、まだまだ1つになりきれていない部分があるじゃないかなと思っています。

サポーターの皆さんと作り上げてきた、この浦和レッズ。を、さらに未来へ繋げていかなきゃいけません。次世代へ、しっかり繋いでいくこと。それは、僕たちの任務というか、役割なんじゃないかなと思っています。もちろん、皆さんのパワー、浦和レッズへの気持ち、というのは十分理解しています。それを、1つの方向に向かって、やっていくこと。

難しいですよね。だって、多くの人がいるんだもん。だけど、良くなるという目標は、絶対忘れないで欲しいなと思います。もちろん、通る道、過程は、違うと思います。けど、皆さんが目指すもの、浦和レッズの姿というものを、みんな、一緒だと思っているので、これからも、サポーターの方とクラブと、ダメなものはダメ。仲間がミスをしたら、失敗したら、2度と、このミスが起きないようにサポートをしてあげる。これがチームプレーだと思います。

浦和に関わる、全ての方が1つになって、さらに大きくなる浦和レッズを見れるのを、今は、周りから見ていますし、アカデミーのところで、そういった選手が加われるように、サポートしていきたいと思っています。

今後も、浦和レッズへのサポートをよろしくお願いします。ありがとうございます。


なお、2021年11月14日。自身の会見で述べた言葉の抜粋はこちら。

「ファン・サポーターの方に、ひと言だけ。良いことも悪いことも、すぐにニュースになってしまうのが浦和レッズだと思っているので、僕ら選手は、子供たちが『浦和レッズのサッカーはすごいね』『僕も浦和レッズのサッカー選手になりたい』と思われるようにプレーしなければいけないですし、いつも応援してくださるファン・サポーターの方々が、小さい子どもたちが『浦和レッズの応援ってすごいね』『俺たちも応援していきたい』と思われるような存在に、今でも十分なっているとは思いますけれども、最初に言ったように、もっともっと大きくしていくと考えるのであれば、もっともっと増やしても良いのではないかと思います。選手もそうですし、一緒に戦ってくれているファン・サポーターの方々も一緒に、浦和レッズの先を見てやっていけたら良いのではないかと思うので、今はこういった状況なので、話したりということはなかなかできませんが、そういった考えをお互いに持って、浦和レッズで1つになって進んでいければ良いと思います」










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