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REDSインタビュー

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[REDSインタビュー]山田直輝が7月にスタートした『Online J‐Leaguer』とは?

『REDSインタビュー』は、トップチームやレディース選手、監督、スタッフ、関係者などを深掘りし、その言葉を掲載するコーナーだ。今回は特別編として、浦和の街で生まれ育ち、現在は湘南ベルマーレで活躍する山田直輝選手に2022シーズンの総括として、今年7月から始動した活動について話を聞いた。


RP:今回、湘南ベルマーレ所属で、浦和レッズOBの山田直輝選手が、今年7月から新しい活動を始めた、ということでお話を伺います。
直輝:サッカーがうまくなりたい少年・少女たちを対象に、Jリーグで活躍する現役選手とオンラインでつないで、これまでの経験に基づいたアドバイスを伝える『Online J‐Leaguer』という活動です。

RP:スタートして4カ月あまりですが、どのぐらいのサッカー少年・サッカー少女とオンラインで対面し、お話ししましたか?
直輝:これまでに200人ぐらいですね。チームの1学年選手全員というケースもありますが、ほとんどは1対1の対話です。対象となるのは、しっかりと自分の言葉で話せて、考えられる年代として、小学校4年から6年生で募集しています。

RP:反応はいかがですか?
直輝:子どもたちの感想は、憧れのプロサッカー選手と話せて「うれしかった」「楽しかった」という反応と共に保護者のかたから「終わってから、子どもの意欲が上がりました!」「選手に言われたことを家ですぐに実践しています!」という言葉も多くいただいています。また、選手が熱心に伝えている姿を見て「〇〇選手のファンになりました!」と言ってくださる子どもや保護者も多いです。

RP:子供たちから「この選手に聞きたい」とか、リクエストはあるのですか?たとえば、「〇〇のサポーターなので、○○選手の話が聞きたい」など。選手とのマッチングは、どのように行われているのですか?
直輝:実際に要望をくださる方もいます。しかし、運営側で要望に関係なくマッチングを行っています。
応募のときは、名前・学年・所属するチーム・ポジション・悩み・将来の夢などを記入してもらってから、その悩みや課題に答えられる選手を選んで、僕がマッチングします。「この質問には、あの選手が良いな」と思って、つながりのある選手に連絡しています。(活動の意義として)憧れのサッカー選手に会う、というより、自分が抱える悩みを、同じ境遇にあっただろうプロサッカー選手は、当時、どのように考え、過ごしたのか?そのことを聞くことによって、子供たちにプラスになるようにしたいのです。『Online J‐Leaguer』を始める動機のひとつに、プロサッカー選手を身近に感じてもらうことがあります。ただ、参加したお子さんが「湘南のGK谷晃生選手が好きです」といって、オンライン上で谷選手と対面しても、ポジションがフィールドプレーヤーだったら、的確なアドバイスは出来ないでしょうし、あまり意味がありません。

RP:いまの子供たちの悩みや質問に、世代の違いはありますか?
直輝:「ドリブルがうまくなりたいのですが、どんな練習をすればよいですか?」というような当時の僕たちも思っていたような質問もありますが、違いはありますね。いまの子供たちは、頭を使ってサッカーしているな、と思います。僕が小さい頃は、ただ、サッカーが好きでやっていただけでした(笑)。たとえば、ボランチでプレーする子の質問には『攻撃の時、守備のことを考えなければいけないのに、監督からは“もっと攻撃に出なさい”と言われます。どうしたら良いのでしょうか?』とか、僕が小学校の時、「そんなことを考えていなかったよ!」と驚くような、レベルの高い質問が出ます。僕としては「何も考えていなかった」とも言えないので……プロになって、あらためて感じた「子供の時、こんなことをしていれば良かったな」というアドバイスをします。いまの子供たちは頭を使っていますし、しっかりと指導されています。あと子供たちよりも、保護者のかたのほうが、僕たちに聞きたいことが多いと感じます。

RP:具体的には?
直輝:所属する少年団の試合に見に行って、「ああしろ、こうしろ」って、ついつい言ってしまうとか、食事面とか。子供たちに「ご飯をしっかりと食べて、しっかり寝なさい」というものの、なかなか聞いてくれないので、「プロの選手から、もっと言ってやって下さい」とも言われます。そのことを僕たちが伝えたことで、しっかりご飯を食べるようになったり、早く寝るようになったという話を聞きます。

RP:『Online J‐Leaguer』を立ち上げるキッカケ、動機は何ですか?
直輝:僕自身が自分自身の価値であったり、この先のことを考えたときに、競技以外のことを相談したかたに話したところ、「やってみましょう」ということで動き始めました。それが、ことしの1月のことでした。さまざまな準備をしながら、今年の7月4日にスタートしました。この日は僕の誕生日ですが、別に合わせたわけではありません(笑) 2、3年前から、子供たちとJリーガーと触れ合う機会を作れれば、という考えはありました。実は、僕が心配していることや、長く課題に思っていることがあるんです。
それは、子供たちの指導・教育環境の地域差やプロアスリートのキャリア課題です。そして、世の中に面白いコンテンツが増えるなかで少子化が進み、子どものスポーツへの興味が薄れることで起きるサッカー離れ。大きくこの3つです。『Online J‐Leaguer』をやっていくなかで、こうした課題を少しでも解決できるように考えて行っています。

RP:サッカー離れという点では、新型コロナウイルス感染によりJリーグの客足が戻ってこない、というのが、スタジアムを見れば、よく分かりますね。
直輝:まさにそのことで、サッカーの人気といいますか、僕が育った浦和レッズの、いまのスタジアムを見て、寂しさを感じます。埼スタに毎試合5万人の皆さんが入っていた時を知っているだけに、余計にそう思います。僕は将来、指導者を目指しますが、Jリーグに人気がなかったら、それは寂しいです。たとえ、競技自体に興味がなくなっていくなかでも、『Online J‐Leaguer』をやることで、子供たちは、自分に話をしてくれた選手のファンになってくれます。はじめは正直、選手のことを知りません。「この選手、誰?」という感じです。でも、子供たちのために、選手が親身に話してくれたあとには、「試合を見に行きます」「大好きになりました」「YouTubeで早速、プレーを見ました」など、保護者のかたから子供たちの反応を聞きます。いまは面白いコンテンツがあふれていて、サッカー自体に興味がないと言われます。でも、スタジアムに来てくれれば、あの雰囲気を味わってもらえれば、ファンになってくれるはずですし、そのお子さんが将来、Jリーガーになるかもしれない、そうした子供たちを、1人でも増やしたいんです。この活動が、サッカー界の今後の発展に少しでも役立てると思います。ほかにも似たようなサービスはあります。でも、子供たちの課題や境遇にマッチした選手を選べるのは、現役Jリーガーである僕ならではですし、選手たちに「子供たちに今までの経験を話してもらいたいんだよね」と伝えると、「自分で良いんだったら」と快く受けてくれます。J1からJ3各カテゴリーの選手でも、代表選手でもそうです。みんな、サッカー界のことを思ってくれているんだな、と改めて感じます。

選手は「伝えてあげる」立場ではなく、会話をすることで自分のこれまでを振り返ることで改めてサッカーに対する自分の気持ちを確認したり、子どもたちにわかりやすいように言語化するスキルが身に付きます。

キャリア問題について言えば、僕らは、表面的にはプレーすることでしか価値を見いだせない存在です。

しかし、自分たちがプレーする以外の価値を知り、社会に還元することで、セカンドキャリアの道筋になればと考えます。とはいえ、サッカー選手はプレーするだけでいい、という考えは今もありますし、セカンドキャリアを考えている選手に対して、「なぜ、サッカーに集中しないんだ」という風習はあります。でも、いざ、セカンドキャリアにむかう際、何も出来ないと思うんです。サッカー以外で社会に貢献できる場を作りたい、そのきっかけにしたい気持ちもあります。

RP:最後に今後の活動について、教えて頂けますか。
直輝:今後については考えています。いまの活動は、子供たちにモチベーションを与えたり、アドバイスすることです。しかし、それだけでは、効果は短期的です。Jリーガーになった僕たちの言葉を聞くと、保護者のかたから「次の日から目の色が変わったようです」と聞きます。それだけ子供たちの一瞬のスイッチの入りようはすごいです。ただ、子供たちの成長を実現するには、一番近くにいる親御さんや、監督・コーチの質をあがることが大事です。性格や傾向を踏まえた、理論的なアプローチと感情的なアプローチが大事です。そのために自分たちの経験を最大限に生かし、日ごろの環境の質を向上させる、親の教育プロジェクトや親や指導者が、なかなか出来ない領域、子どものメンタープロジェクトにも携わりたいです。また『Online J‐Leaguer』は、経済的な格差で指導の差が出て、夢の幅を狭めないように、無料でやっています。このプロジェクトや、僕の思いや方向性に賛同してくれるパートナーの方、パートナー企業の方と一緒に走っています。是非、興味のあるかたがいらっしゃれば、声をかけて頂きたいです。『Online J‐Leaguer』は、サッカー界にとって必要なことだと確信しています。長く続けられるように、皆さんと盛り上げていきたいです。

RP:ありがとうございました。

(聞き手:レッズプレス!!佐藤亮太)


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