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REDSPRESS EYES|レッズレディースOG・一法師央佳の現在〜サイデンカップ大会を通して|レッズプレス!!

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レッズレディースOG・一法師央佳の現在〜サイデンカップ大会を通して

(有賀久子)


レッズレディースOG・一法師央佳の現在〜サイデンカップ大会を通して

8月21日(木)から23日(金)までの3日間、全国から高校が集い、レッズランド(さいたま市桜区)の人工芝サッカー場2面を使って『サイデンカップ』が開催された。連日の暑さや天気の急変に細心の注意を払う中、第1回大会は盛況のうちに無事に終わった。



『サイデンカップ』は、三菱重工浦和レッズレディースのオフィシャルパートナーを務めるサイデン化学株式会社[代表:籠島嘉?/本社:東京都中央区日本橋]が主催した独自の大会だ。同社は、新シーズンも北海道北斗市で行われたトレーニングキャンプを特別協賛するなど、クラブを支え続ける企業である。

今回の『REDSPRESS EYES』は、同大会の運営を中心で任されたレッズレディースOGの一法師央佳(いっぽうし・ひろか)の奮闘と、大会を開催するキッカケである“高校生の就職と新卒採用”に、サイデン化学が長年力を注いでいるサッカーをはじめとする地域スポーツ振興を掛け合わせて生まれた、新たなリクルートの姿に迫る。

一法師央佳(いっぽうし・ひろか)は、2023年10月31日をもって、三菱重工浦和レッズレディースを最後に選手生活から退くことを発表した。2001年5月生まれの、現在23歳。ジュニアユースからレッズレディースのアカデミーで育った。

引退の理由。それは一瞬、言葉に詰まるような、想像を超えるものだった。

2度の前十字靭帯損傷から復帰にむけたリハビリの最中に感じた体調不良。リハビリを中断し、検査入院したところ、『突然死』に繋がる『運動誘発性不整脈』が練習中に出ていたことが判明。医師からは「命が第一優先なので、サッカーは諦めて下さい」と伝えられ、『ICD』という植込み型除細動器を植込む手術に臨んだ。

当時、一法師は「正直、このことを発表するかすごく悩みましたが、包み隠さず、伝えさせていただきました。まさか自分がこんなにも早く引退することになるとは思っていませんでしたし、ショックが大きかったです」と胸の内を吐露していた。

その後、一法師の名前を耳にしたのは、今年に入って4月14日の、2023-24WEリーグ 第14節・ノジマステラ神奈川相模原が行われた浦和駒場スタジアムだった。そのハーフタイムで、サイデン化学(株)の籠島嘉?代表が「今年の夏にサイデンカップを開催しようと思っていて。一法師を、サイデンカップの運営として会社に来てもらっているんだ」とスカウトしたことを教えてくれた。「では!すぐにでも、一法師選手の取材を」と、つい前のめりになったのだが、「今、初めての大会運営にてんてこ舞いで、もう少し先の方が良いかな(苦笑)」ということで、この開催のタイミングを待っていた。



『サイデンカップ』参加は、6校。

順不同に、新潟工業高校(新潟県)、福島工業高校(福島県)、勝田工業高校(茨城県)、大垣工業高校(岐阜県)、宇都宮工業高校(栃木県)☆3日目のみ、都立総合工科高校(東京都)☆2日目のみが集まった。普段対戦できない、他県の工業高校と試合ができたことで「とても良い経験ができた」と伝えている。

2日目の、8月22日(木)の午後、大会を訪ねた。

活気に満ちた高校生の声が飛びかう。運営本部には、一法師だけではなく、レッズプレス!!としては懐かしい顔もいた。高橋彩子や土橋優貴、小島星良、そして今年7月に引退を発表した森田美紗希が、スタッフとして参加。籠島社長は「大会期間中は、運営人数が必要ということで、(同社の)レッズレディースOGにもサイデンカップスタッフとして運営を手伝ってもらっている」と話す。
一法師は先輩方に囲まれ、彼女らしい笑顔で大会運営に臨んでいた。



「(大会運営の打診を受けた時は)楽しいなと思ったんですよね。引退して、誰かを支えたいなとずっと思っていた中で、この話を頂いて。率直に面白そうだなと思ったので、是非やらせて下さいと社長に伝えました」と経緯を振り返る。

ただ、全くのゼロベースからのスタート。「やってみたらやってみたで、すっごく大変で」と気持ちがこもっていた。どの仕事にもあることだが、1つの項目を解決すると、次に新たな懸念事項が生まれるといったように、枝分かれするように仕事が増えていくものだ。

「サイデン化学という会社は、サッカー関係者はいる事はいるけれど、誰1人、大会を運営したことはなく、運営に関するノウハウがない中でした。私自身も、ずっと大会に参加する側だったので、運営がこんなにも大変なんだと初めて知ったと言えます。今まで出させて頂いた大会の、運営の方々に感謝しました」と振り返る。

前日まで準備に準備を重ねて、初日を終えた時は「ようやく大会をスタートさせることができた」と安堵したという。「(大会がやって来るまで)不安だったんですよね、正直。ちゃんと準備はできているかな?大丈夫かな?って。そんな時に先輩方もスタッフとして助けに来て下さって。どうにか初日を乗り切ることができました。天気はどうにもならないけれど、暑さに対しては注意、注意で徹底して、細かいところまで配慮するのが大変でした」と話した。

レッズランドで、高校生がボールを追う姿に「去年までサッカーをやっていたとは考えられないぐらい。こんなに暑い中で自分もプレーしていたんだなぁ、と思うんですけどね。今じゃあ、考えられないですね」と笑った。そして、一法師は「こんな暑い中、走り回って、サッカーをして。……戻りたいなぁ、とは思いますけど」と本音の部分ものぞかせた。

大会側に立つことで知った、サッカーの面白さ。今回、芸人ペナルティのワッキーさんの兄で知られるスポーツマネジメント株式会社の代表取締役社長として年間500以上のサッカー大会やイベントを運営し、2019年に同社を退社後、株式会社ssbeeを設立し、スポーツイベントの企画・主催運営に関わる人物・脇田英人さんや中田泰祐さんも、サイデン化学(株)の事業に協力。サポートを頂いた。一法師が、スポーツ運営のプロから学んだのは、楽しむこと。

「脇田さんから、大会運営側が楽しまないと、参加してくれる高校生も楽しめないよ、という言葉を聞いた時に、うん、たしかにそうだな、と思いました。その点は、先輩たちとワイワイと喋りながら運営できているので良かったなと思っています」と笑った。

一法師の身に起こった変化。悔しさが消えることはないだろうが、新たな道を、イチから作り上げたことは、今後の一法師の活躍に欠かすことのできない経験となるだろう。良い現場に立ち合わせてもらった。


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