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REDSPRESS EYES|コーチ平川忠亮が振り返る、1年3ヵ月〜確かな実感と、思い浮かぶ2つの光景〜|レッズプレス!!

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コーチ平川忠亮が振り返る、1年3ヵ月〜確かな実感と、思い浮かぶ2つの光景〜

今回は引退後、指導者として歩みを進めている平川忠亮トップチームコーチに、インタビューした内容をお届けします。


「負荷がかかるメニューも選手は楽しそうにトレーニングしていた」

ビデオ会議システム『Zoom』越しの平川忠亮コーチは長髪。聞けば、5ヵ月切っていないとのことだ。6月4日(木)、チームは2ヵ月ぶりの全体練習を行った。11対11、フルコートでのゲームが実施され、平川コーチの声にはひと段落といった安堵感があった。

2018年シーズンをもって、現役引退。翌年、浦和レッズユースのコーチとなった。ゆくゆくはトップチームにと思っていたが、出番は早々にやってきた。

19年3月14日、トップチームコーチ就任。

当時、指揮官はオズワルド・オリヴェイラ監督。リーグ、ACLの2冠を目指していた名将のもと、なにを学ぶのか?そう期待されたが、5月に監督交代があり、代わって大槻毅監督が就任した。チームを立て直すなか、リーグは残留争い寸前の2桁順位まで落ち込んだ。その一方、ACLはファイナル進出を決めた。

そしてシーズン終盤の11月には強化部が刷新。強くて面白い浦和レッズの在り方が示された。心機一転で迎えた今シーズン、公式戦2戦2勝。勢いそのまま3連勝という矢先、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、リーグ中断となり、いまに至った。

「この1年、非常に早かった」。この言葉に実感がこめられている。

キャリア豊富なコーチでも経験したことのない状況。まして新米コーチならなおさら早く感じたはずだ。

この1年3ヵ月を、平川コーチはどうとらえているのか?

「同じサッカーでも、選手としてプレーするのと、コーチングスタッフとしてかかわるのはまったく違う世界。選手時代の経験を武器にやってきたが、あくまでもプラスアルファであって(指導者としての)基礎の部分ではなかった。だからこそ学ぶものが多く、学ばなくてはならないものはまだまだあると感じた」

また、この言葉から、平川コーチとしての2つの実感がうかがえる。

ひとつは、コーチ業の難しさ。

「昨シーズンはハードな日程のなか、回復と試合が交互に行い、あまり練習らしい練習ができなかった。その日程で、新米コーチの僕は、試合の準備をして、試合して、また準備しての繰り返しで、とても早く感じた」

そして、もうひとつ。充実感だ。

「キャンプは、チームづくりの基礎。昨年はユースチームのコーチだったので、チームの作り方を経験できなかった。ことし初めて開幕にむけ、作り上げ方、作り方が経験できた。準備やスタッフが作るメニューなど、『こういうサッカーがしたいから、こうした練習をしよう』と徐々に作り上げる仕事ができた」。コーチ業の面白味を感じていることだろう。

思い出される光景がある。

全体練習後、大槻監督と1時間くらいだろうか。ピッチを2人そろって歩いている光景だ。内容は、家族の話もあるそうだが、大半はサッカーの話。

「あの時間は、大槻監督にとっては、サッカーのことを普通に話しているだけかもしれないけれど、自分にとって勉強になる時間。どうやって練習して試合にむかえばいいのか、そうした考えは監督しか見えない景色がある。そうしたものに触れられる時間。盗めるものが盗んでいきたい。あとダイエットにもなっている(笑)。ピッチに立っているとはいえ、走っているわけではないので、健康管理も重要だから」

2人の出会いは平川コーチが筑波大2年のとき。当時、大槻監督は筑波大のコーチ。その後、浦和では選手とコーチ。現在はコーチと監督の関係と、20年近い、いわば師弟関係にある。

「(大槻監督は)昔から偉そうではなくフランクに話してくれる。いま監督のもとで働けることは幸せなこと。自分も大学時代にいろんなこと教わって成長できた。いまはコーチとして、選手に戦術を落とし込む手伝いをし、結果を出すために、自分なりの仕事をしたい」

「自分なりの仕事」

それが大槻監督から求められている「選手側の視点」という役割。これは、もうひとつの光景につながる。昨年、平川コーチと柏木陽介が芝生に座り、話している姿を何度か目にした。昨季、ケガと不調にあえいだ柏木。心に溜まった澱のようなものに平川コーチは耳を傾けた。

「(柏木とは)選手の時から、一緒にやってきて、ずいぶん面倒もみた。いいときばかりでなく辛いときも一緒に乗り越えた。昨年は悩んだり、ケガだったり……調子があがらず、自分の気持ちをコントロールできない部分があった。

でも、ことしに関しては(シーズン前)何度も話しをした。そのなかで『浦和のために戦いたい』と今シーズンへの強い気持ちを感じた。

(シーズンが始まって)コーチだけでなく選手たちの信頼を勝ち取り、試合では良い仕事ができた。子供っぽさがまだあったが、ひとつまた皮がむけたと思う」と成長を認めている。

これは柏木だけではなく、選手のなにげない表情に目を配り、心の状態を気にかけている。

コーチとして大槻監督を支える平川コーチ。

目標は、引退セレモニーで語られたように監督として埼スタのピッチに戻ること。それは変わらない夢だ。

「レッズのために監督になりたい。でも、いまはことしの目標であるACL出場と得失点差2ケタにむけ、大槻監督のもと、全力でやりたい。そのことが将来の監督への一歩となる」。

高いサッカーIQと自然とその姿を見てしまう厚い信頼感。

現役時代同様、いまもそして、将来、監督としても生かされるはずだ。

(取材・構成/レッズプレス!!ライター佐藤亮太)


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