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REDSPRESS EYES|江橋よしのり×郡司聡 女子サッカー対談その4|レッズプレス!!

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江橋よしのり×郡司聡 女子サッカー対談その4

多角的な視点で浦和レッズに迫るコラムコーナー「REDSPRESS EYES」。今回は佐藤亮太記者が、浦和レッズレディースとなでしこリーグの現状と課題、そして未来への可能性を全4回のシリーズで追求します。


なでしこリーグの開国宣言
女子サッカーの現状を知る〜座談会2

●なでしこリーグを魅力あるリーグに

江橋:なでしこジャパンの選手やコーチと以前、「女子サッカーは代表の成績に左右され過ぎている。リーグはリーグで独自の魅力を作らないといけない」という話をしました。代表に観に来た人が「1回見たからいいや」にならず、また観に行こうと思って欲しいですよね。代表に限らず、リーグも「行く理由」を提供しないといけませんね。

RP:そうした「行く理由」を作るのが伝える側の仕事ですよね。ただ、構造的に伝えられない背景(☆ 座談会その1参照)があります。痛し返しがありますよね。

江橋:INAC神戸レオネッサでは昨年、試合の動画配信をスタートさせましたが、例えば、試合の中身は無料で見せて、選手に会いに行きたい人がスタジアムに行くというのも「行く理由」にあると思います。

郡司:それは良い試みかもしれません。いかに「会いに行きたくなる女子サッカー選手像」を作り上げるか。なでしこリーグにはヴィジュアル映えのする選手たちがたくさんいますから、その戦略はありかも。

江橋:初めての方も何回か観戦すれば、気になる選手は出てきますし、いわゆる“推し”の選手も出てくるでしょうし。男子の情報を読みたいメインの購買層で、女子のことも知ってもらおうとしたら、「この子、どんな子だろう」ですよね。

郡司:人物なのですよね、結局。

江橋:平昌オリンピックで、女子カーリングチームも皆さんの可愛らしさが話題になりましたからね。

郡司:そうですよ。個人的な持論は「女は愛嬌」。愛嬌のある女性に、世の男性は惹かれますからね。
 
江橋:愛嬌や可愛げ。僕らの仕事も必要ですよ(笑)。輝いている、キラキラな姿を見せて、リピーターになってもらうのも手ですね。

RP:そもそも各クラブがリーグを盛り上げたいのか、盛り上げたくないのか、という点もありますよね。

郡司:最近のJリーグクラブは考え方が変わりつつありますが、「良い試合を見せれば、お客さんは必ず増える」、「チームが試合に勝てば、お客さんは必ず増える」というサイクルを信じている思考回路は、まだまだ根強いです。観客動員数が勝ち負けに左右されない状況を作り出すためには、面白いアイディアを出し合って、スタジアムに行く動機やクラブの魅力作りをすること。そうした取り組みは、避けては通れません。

RP:そうした愛嬌のようなものもありますが、チームの強さも魅力のひとつ。しかし、勝てば良いというわけではありませんよね。

江橋:リーグ3連覇して、代表選手が多くいるのに、日テレ・ベレーザにはあまりお客さんが入りませんよね。それは決まったスタジアムがないからであって、毎回やっている場所が違います。それはグラウンドが取れないからですが、結果的に、いつ、どこでやっているのかがわからないことになります。それが原因の1つとされています。また、女子サッカーだけで発信するのにはどうしても限界があります。なので、女子スポーツをひとつにまとめたメディアがあれば良いと思います。女子サッカーマガジンは無理でも、女子アスリートマガジンがあれば、可能かと。

郡司:女子スポーツの中で、なでしこのステータスは高いということですね。

江橋:たとえば、浦和レッズの猶本光選手と話題のカーリング女子の藤澤五月選手との対談とかできると良いのではないでしょうか。また、ほかの競技団体からは女子サッカーと絡めるならば、選手を出したい、そんな声も聞かれます。女子野球代表の選手たちがなでしこジャパンの練習を見学したり、スタジアムの前で女子野球のアピールをしたり。

郡司:女子スポーツのなかのステータスでいえば、なでしこは高いということですね。

江橋:観て応援する人たちにも、こうした選手がいますよという紹介ができて、他競技との横のつながりもできますよね。卓球の平野美宇選手もそうですが、西が丘のナショナルトレーニングセンター育ちの選手たちは競技の垣根を超えたアスリート同士が自然に交流していたとも聞きます。

郡司:例えば、期間限定で同じ屋根の下で他競技の選手たちと共同生活をして、互いを刺激し、高め合うとか……。こう『テラスハウス』的に。

江橋:どこかそういう企画をやってくれるスポンサーはないですかね。

以上
(進行役:レッズプレス!!ライター佐藤亮太)

【プロフィール】
江橋よしのり(えばし・よしのり)

ライター、女子サッカー実況・解説者、FIFA女子バロンドール投票委員。2003年以降、世界の女子サッカーを幅広く取材。主な著作に『世界一のあきらめない心』(小学館)、『新なでしこゴール!!』(講談社)、など。近著は児童小説『おはなし猫ピッチャー』1・2巻。

郡司聡(ぐんじ・さとし)

1970代生まれの茶髪編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクションを経て、2007年にサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』編集部に勤務。その後、2014年夏にフリーランスへ転身し、現在は浦和レッズ、FC町田ゼルビアを定点観測中。


(佐藤亮太)

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