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REDSPRESS EYES|江橋よしのり×郡司聡 女子サッカー対談その2|レッズプレス!!

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江橋よしのり×郡司聡 女子サッカー対談その2

多角的な視点で浦和レッズに迫るコラムコーナー「REDSPRESS EYES」。今回は佐藤亮太記者が、浦和レッズレディースとなでしこリーグの現状と課題、そして未来への可能性を全4回のシリーズで追求します。


なでしこリーグの開国宣言
女子サッカーの現状を知る〜座談会2

●「観客動員数を増やすには」

RP:では現状、どれだけ、なでしこリーグは見られているのでしょうか?昨年のなでしこリーグの観客動員数を調べる(なでしこリーグ提供)と、1部の平均が1437人。ちなみに浦和レッズレディースのホームゲームは平均2000人前後です。

郡司:逆に2000人もいるのですね。J2リーグで観客動員に苦戦しているクラブに匹敵する数字であることに少々驚いています。

江橋:2000人もいる、なんですよ。2011年のワールドカップ優勝前で一番入った、いわば最大値が2000人くらいでしたから、だいぶ定着した印象ですよね。

郡司:僕は町田を中心にJ2を取材していますが、地方の会場では2000人入らないこともありますから、たしかにそれだけ定着しているという印象です。

RP:また、2017年の浦和レッズレディースのリーグ開幕戦、AC長野パルセイロ・レディース戦を見ますと、長野Uスタジアム(長野県)で迎えましたが、3064人。なでしこリーグカップ決勝の浦和レッズレディース対ジェフ千葉レディースは3129人。それでも浦和のクラブスタッフは、ホームゲームで平均3000人はいれたいと話していました。そこで私の意見ですが、お客さんを増やすには、より女の子、女性を取り込めれば良いのかなと思うのですが、いかがでしょうか?

郡司:以前、浦和レッズレディースを取材していて、感じたことも含めて話しますが、どこに訴求するか、どこをターゲットに置くかを踏まえると、女性はターゲットになりづらいと考えます。
数多くのエンターテインメントがある上に、土・日という限られた日数の中で、休日などの余暇になでしこリーグを観戦するという選択肢は、女性の中での優先順位としては、かなり下になるのではないでしょうか。
さらに同じサッカーファンというカテゴリーでは、ほかにJリーグがあります。彼氏や友達もいることも含めると、女性が女子サッカーを観戦するのは想像しづらいです。

RP:なるほど。

郡司:その一方で一般的なライト層の方々は、競技レベルの話題や戦術などにはほぼ関心がなく、「頑張る女子像」と言いましょうか、練習後や練習以外の時間はどんな生活をしているのか、どんな仕事をしているのか、そうした頑張る女子に興味が行きがちで、そうした別の側面からプレーヤーを見ています。女子サッカーの観戦者は中高年の方が多いのは、そうした姿を見たいからではないでしょうか。また実際にサッカーをプレーしている小・中・高生に観戦して欲しいですが、土・日は練習や試合があるので、結局見られませんよね。

例えば、町田は少年サッカーの街でもあるので、プレーヤーの土・日に自分たちの試合や練習があるから、おらが町のクラブの試合を見に行けないというケースが結構多いと聞いています。決してそれだけではないでしょうけど、J1リーグが金曜日開催を始めた背景には、プレーヤーも観戦できる機会を作るという意図があるのかもしれません。なでしこリーグでも平日開催を盛り込むことで実際にプレーしている女性も試合を観戦できるかもしれませんが、今度は中高年の方が来られなくなる可能性が生まれるでしょう。

RP:何をターゲットにするか。難しい選択ですね。

郡司:例えば「Jユニ女子会」のメンバーに話を聞いてきて思うことは、女性ファンは、実際の試合以外のイベントやスタジアムグルメなど、スタジアムに行くことで生まれる付加価値が、観戦の動機になりやすいという傾向があります。女性のファン層を増やすことに注力しようとすると、どうしても予算などのコストや、アイディアを考えて、それを実行に移すマンパワーが必要になります。そうなると、女子のサッカークラブがそこまで展開するのは難しいことではないでしょうか。

訴求の仕方を考える必要はありますが、「頑張る女子」を内外に広く伝えることで、極端な話、「よし、オレがお金を出してサポートしてやろう!」と考える方が出てくる可能性があるかもしれません。


江橋:つまり、プレーの質よりは選手の人格を伝える。

郡司:自分の人生を自己投影できたり、頑張っている女子選手を応援したり。そうした空気を作ったほうが良いと思います。自分は女子のフットサルチームを取材することがありますが、ピッチ外の等身大の姿やそうした人間ドラマはファンも受け入れやすく、感情移入しやすいですし、数は十分ではなくても、実際に一定のファン層はいますからね。

RP:ただ「女工哀史」のような苦労話とか健気さだけに焦点が当たるのは違うかなと思います。

江橋:それは伝える側が、その選手が何のために頑張っているのか?それが憧れというか、「私も、あのようになりたい」という頑張りとして伝えることが大事だと思います。「辛いけれど、耐えています」は、たしかに感情移入しやすいですが、それだけでなく、「自分はこうなりたい」「こうなりたいから頑張っているのだよ」と表現することが大事です。

郡司:同じ頑張る姿を伝えるにしても訴求ポイントを間違ってはいけませんよね。

江橋:金銭的なものでいえば、活動費などをクラウドファンディングで、小口のスポンサーを集めるのもひとつの方法だと思います。

(進行役:レッズプレス!!ライター佐藤亮太)

【プロフィール】
江橋よしのり(えばし・よしのり)

ライター、女子サッカー実況・解説者、FIFA女子バロンドール投票委員。2003年以降、世界の女子サッカーを幅広く取材。主な著作に『世界一のあきらめない心』(小学館)、『新なでしこゴール!!』(講談社)、など。近著は児童小説『おはなし猫ピッチャー』1・2巻。

郡司聡(ぐんじ・さとし)

1970代生まれの茶髪編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクションを経て、2007年にサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』編集部に勤務。その後、2014年夏にフリーランスへ転身し、現在は浦和レッズ、FC町田ゼルビアを定点観測中。


(佐藤亮太)

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