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REDSPRESS EYES|江橋よしのり×郡司聡 女子サッカー対談その1|レッズプレス!!

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江橋よしのり×郡司聡 女子サッカー対談その1

多角的な視点で浦和レッズに迫るコラムコーナー「REDSPRESS EYES」。今回は佐藤亮太記者が、浦和レッズレディースとなでしこリーグの現状と課題、そして未来への可能性を全4回のシリーズで追求します。


なでしこリーグの開国宣言
女子サッカーの現状を知る〜座談会1

ある日、女子サッカーについて、こんな疑問が頭に浮かんだ。「なぜ、大きく話題に取り上げられないのか?」。

レッズプレス!!では、浦和レッズレディースを中心に取材を進めているが、そこにあるのは敷居の低さだ。

男子サッカーに比べ、サッカーがわかりやすく、選手とファン・サポーターの距離が近いため、感情移入がしやすく、お弁当を広げて観戦できるほど、気軽な気持ちで観戦できる。取材する側から見ても、取材しやすく、時に深い話、良い話を聞けることがある。

しかし、そうした話はなかなかサッカーファンのあいだでも共有できていないと感じる。つまりはサッカーファンを介して、世間にも伝わっていない。なぜ、女子サッカーは多くの人に伝えられないのか?

そこで長年、女子サッカーを取材し続けるサッカージャーナリスト、江橋よしのりさんと、浦和レッズやJ2リーグ所属のFC町田ゼルビアを中心に取材し、女性サポーターの取材経験も豊富な編集者であり、ライターの郡司聡さんにお集まりいただき、約1時間半、「女子サッカーのいま」を語り合った。「2011FIFA女子ワールドカップ」でなでしこジャパン(日本女子代表)が優勝してから6年、いまの女子サッカー界には何が起こっているのか。

●起爆剤はやっぱり五輪やワールドカップ?メディアと女子サッカーとの関係

江橋:女子サッカーを追っていこうと思ったのが10年以上前のこと。それまではサッカーの取材をやっておらず、違うことをやっていましたが、サッカーも良いなと思い始めました。ただ、男子はちょっと大変だな、と。女子ならば、取材がしやすいと勧められました。

ただ当時は、女子サッカーの取材だけで食べていける感覚はありませんでした。なでしこジャパンがワールドカップで優勝した2011年からの数年間は、女子サッカーだけでもじゅうぶんに仕事がありましたが、女子サッカーだけで食べていける人はいま、果たしてどのくらいいるのでしょうかね。

郡司:女子サッカーの書き手で、頭に思い浮かぶのは、まずは江橋さん、そして、フリーランスの馬見新拓郎さんくらいでしょうか。

江橋:一時期は世界中どんな取材現場にいっても取材者はいましたが、皆さん、女子サッカーだけでなく、ほかの仕事を抱えています。それは男子の取材現場でも同じでしょうか?

郡司:おそらくサッカーライターだけで食べられる人はごくわずかだと思います。

江橋:つまり、伝えようにも女子サッカーだけでは踏み切れない。その一方でここ10年以上、女子サッカーの書き手が変わっていませんよね。また、サッカー雑誌で女子を取り上げようとしても、たまにしか掲載されません。そうなると読者は予備知識がないので、ほんのさわり程度。プロフィール程度で深い内容の記事が必要ないわけです。

郡司:女子サッカーの予備知識や情報のない読者に広く伝えようとすると、それで決められた文字数はいっぱいになりますからね。

江橋:サッカー専門誌では何か大きな大会があるときは、これまでの1年の活動をバッと流し読みができます。ただ、1年かけて取材しても、原稿にするのは400字程度で、それでは取材したものがなかなか出せないなと感じました。サッカー雑誌は、あくまで男子サッカーの雑誌。女子はあくまでおまけではなのかと。僕らは深い内容を書きたくても、編集側はたまにしか掲載しないので、「そこまでの内容は要りません」と言われます。また、女子サッカーにはセルジオ越後さんや大住良之さんのような方がいらっしゃらないですし、女子サッカーのことを書いてもあまり響かないように感じます。

RP:レッズプレス!!でもなでしこリーグをホームゲーム中心に取材し、掲載しますが、SNSだけの判断ですが、数を見る限り、あまり興味がないように思えます。

(進行役:レッズプレス!!ライター佐藤亮太)

【プロフィール】
江橋よしのり(えばし・よしのり)

ライター、女子サッカー実況・解説者、FIFA女子バロンドール投票委員。2003年以降、世界の女子サッカーを幅広く取材。主な著作に『世界一のあきらめない心』(小学館)、『新なでしこゴール!!』(講談社)、など。近著は児童小説『おはなし猫ピッチャー』1・2巻。

郡司聡(ぐんじ・さとし)

1970代生まれの茶髪編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクションを経て、2007年にサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』編集部に勤務。その後、2014年夏にフリーランスへ転身し、現在は浦和レッズ、FC町田ゼルビアを定点観測中。


(佐藤亮太)

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