敵地優勝とはならなかった。

試合後、取材エリアで涙を流す福田史織の気持ちに触れると、ここで決めたいと強い気持ちで試合に臨んでいたことがよく分かるが、気持ちとは裏腹に、前半からレッズレディースのサッカーを届けられなかった。

WEリーグ初優勝目前となったAC長野パルセイロ・レディース戦は、2対1の逆転負け。歓喜の瞬間は、次節以降に持ち越しとなった。試合後に語った塩越柚歩と柴田華絵、ボランチ2人のもどかしさが、そのまま結果に繋がった。

立ち上がりこそ、11分に猶本光からの斜めのパスが島田芽依に入り、冷静に先制ゴールを決める。“悪いながらも点を奪える”、そんな今シーズンのチームの強さを感じたが、この場面以外は、長野のタイトなマークに手を焼いた。

ポイントは、前線とボランチ以下に生まれるスペースを埋めきれず、相手のプレーを限定出来なかったこと。前と後ろ、比重をどちらに置くか。筋書きはあっても、相手と向かいあい、難しい局面が続いた時の柔軟な対応力が、この日は物足りなかった。

長野がそうさせなかった、とも言える。順位表には表れぬ、組織力と球ぎわの強さ、アグレッシブなプレー。ホームで優勝させない、長野の意地だ。さらにレッズレディースOGでもある田代久美子監督が成績を理由に今季限りで退任する事もクラブから発表されたばかりで、“笑顔で終わりたい”その思いが、選手たちの力強い一歩になっていた。「ピッチに立っていて楽しかった」と、これまたOGの三谷沙也加が振り返る。関係者も「今季のベストゲームでした」と挙げていた。

残る2試合は、90分間に、さまざまな場面が訪れるだろう。次の大宮アルディージャVENTUSとのさいたまダービー、最終節のちふれASエルフェン埼玉との埼玉ダービー、いずれも長野同様、浦和を負かすための戦術を立ててくるだろう。

リーグという長丁場を勝ち抜くためには、長野戦のような内容をモノにする必要がある。その先に想像を超える喜びが待っているのは間違いない。首位に立つ者が優位である事にも変化なし。我慢の1週間だ。この悔しさを、ホーム浦和駒場スタジアムでぶつけよう。

サポーターは、迎える準備は出来ている。